心筋炎ってどんな病気?

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コロナワクチンの若年者の副反応のひとつでもある心筋炎。どんな病態?どんな症状に気を付けたらいい?治療法は?ということをまとめてみました。

心筋炎とは

心臓は心筋という筋肉でできていて、全体的に収縮したり弛緩したりして、ポンプのように全身に血液を送り出しています。この心筋に炎症がおこる病気が心筋炎です。心筋は心(外)膜という膜に覆われており、この膜に炎症が起こった場合を心(外)膜炎と呼び、このふたつは密接に関わっています。

心筋炎の原因

心筋の炎症が起こる原因とはなんなのでしょうか。多くはウイルスなどの感染です。また、細菌の感染でも起こることがありますし、薬物やワクチン、その他、自己免疫機序で起こる心筋炎もあります。さまざまな原因で起こる心筋細胞の炎症を総称して心筋炎と呼んでいます。

心筋炎の症状

典型的な心筋炎は風邪症状の1-2週間後に、疲れやすいなどの非特異的症状で発症します。心筋炎が起こると、心臓の収縮状態が万全でなくなるため、息切れや倦怠感などの症状が出ます。急激に起これば肺に水が溜まったり、それにより息苦しくなったり、全身がむくんだりといった心不全兆候が出ることがありますが、徐々に起こってくる心筋炎はこれといった決定的な症状がないために見逃されやすくなります。また、熱も出ますが、一般的に高熱であることは少なく、微熱程度でも心筋炎が起こっている可能性は否定できません。

心筋炎になると、上記のような全身の症状が出ることが多いですが、心筋を自動的に動かしている心臓の伝導系という回路に異常を来し、突然不整脈が起こることもあります。不整脈が起こると、場合によっては短時間で致死的な状態になることもあり、一番懸念される事態です。

また、心筋の炎症とともに、外側の心(外)膜の炎症が起これば、心外膜炎も伴うことになり、膜から液体が漏れ出し、心外膜と心臓の間に漏出液が溜まることもあります。

心筋炎の診断

心筋炎は、超音波検査で心臓の動きを見ることである程度診断することができます。ある程度、というのは、超音波検査ではリアルタイムでの心臓の動きを見て、心臓の動きが良いか悪いか、きちんとポンプ機能を果たせているかいないかを見ることができますが、それが起こっている原因までは探し出すことができません。エコーでの見た目上、心筋自体に大きな変化があるわけではなく、あくまで動きがよいか悪いか、そして病歴などから心筋梗塞などの心疾患を否定して初めて、心筋炎の診断が付けられます。

逆に言うと、風邪のあと疲れやすい、しんどいのが続いている、という症状は、一般的にもみられるため、心筋炎を疑ってエコーをしないと診断できません。肺炎を除外するためにレントゲンを撮ったら、たまたま心不全のような所見があって、そこではじめて心筋炎が疑われる、ということもあり得ます。また、たまたま心電図を撮ったら不整脈があり、心筋炎の可能性に気づかれる、ということもあります。それくらい、一般には疑われにくい病気ということもできます。また、軽度の心筋炎では、エコー上も大きな異常がないこともあるため、より一層診断が難しくなりますが、その場合はほとんど数日で改善してしまうために、大きな問題にはなりません。

心筋炎の治療

多くの場合は、一般的な対症療法(多すぎない輸液、水分管理、安静など)で数日で改善します。後遺症が残ることもほとんどありません。しかし、自己免疫によるものや、炎症が強いものは、特殊な治療が必要になることもあります。コロナワクチンによる心筋炎は、全例が対症療法のみで改善し、後遺症はなかったとのことなので、ウイルス性心筋炎に準ずる、予後のよい疾患といえるでしょう。

稀にみられる、劇症型心筋炎と言われるものは、数時間で全身の循環動態が悪化し、若年者でも命に関わるものがあります。心臓のポンプ機能がほとんど失われるため、一時的に体外循環やECMOなどを必要とするケースがあります。それでも、救命率はかなり低いと言わざるをえません。

原因が分からない心筋炎は、状態が落ち着いてから、心臓の筋肉を一部取ってくる「生検」という処置が行われることもあります。

コロナワクチン後の心筋炎

米国からの報告を見ると、ワクチン接種後の心筋炎の発症人数は、16-17歳で100万人あたり35人、18-24歳でも100万人あたり20人あまりの割合で発症しており、年齢別にみてもこの年代が多いです。12-15歳も100万人あたり22.4人とあるけど、そもそも接種した人数が少なく、実際の発症者は2人なので、これはまだ明らかに多いということは言えませんので、接種数が増えてデータの更新がされていくのを待つ他ありません。

ワクチン後の若者の心筋症に関して米国の American Academy of Pediatrics (AAP) から、提言もあります。

要約すると、

「心筋炎や心膜炎は非常に稀な副作用であり、ワクチン接種後に発症する人は極めて少数に限られる。

重要なことは、発生した若い人たちのほとんどは軽度であり、多くの場合、自然にあるいは最小限の治療で回復する。

さらに、COVID-19ウイルスに実際に感染した場合には心筋炎や心膜炎ははるかに多く発生することがわかっており、感染による心臓へのリスクはより深刻になる可能性がある。 」

ということです。

また心筋炎の発症は、1回目のワクチンよりも2回目のほうが多いこと、接種後7日以内に発症していること、男性が多いことが分かっています。

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