パラインフルエンザウイルス感染症

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コロナ禍の中、小児科では2021年7月現在、感染症全般が大流行を見せています。季節外れのRSウイルス感染症も多いですが、パラインフルエンザウイルスという、一般にはなじみの少ないウイルスも流行しているとか。パラインフルエンザウイルス感染症とはどのようなものでしょうか?

パラインフルエンザウイルスとは

パラインフルエンザウイルスとは、パラミクソウイルス属というウイルスの属性に分類され、その血清型で1~4型まで分類されます。よく知られているインフルエンザウイルスとはまったく別のものです。

1~4型のパラインフルエンザウイルスは、ぞれぞれ臨床的な特徴がやや異なります。1型2型のパラインフルエンザウイルスは例年秋口から増加する傾向のあるウイルスで、隔年で流行型が入れ替わります。1型も2型も、小児のクループ症状を引き起こすウイルスとして知られています。

3型は春から夏にかけて増加する感染症の原因ウイルスのひとつで、これもクループ症状を引き起こします。(参照:クループ症状について

クループ症状とは、気道の中でも声帯・声門周囲の炎症を起こすと出てくる症状で、典型的には犬やオットセイの鳴くような、ケンケンという特徴的な咳が出ます。症状がひどければ、息が吸いにくくなるような呼吸困難の症状が現れます。

4型はあまり臨床上、問題となることは少ないようです。

2021年のパラインフルエンザウイルス流行

コロナ禍の影響で、各病院でのPCR検査の技術が進んだ結果、今まで「何らかのウイルス感染による急性上気道炎(風邪)」または「クループ症候群」と診断されていたものの原因ウイルスが特定されるケースが増えてきました。まだすべての病院に一般的にあるものではありませんが、以前に比べると劇的に短時間で、しかも簡便にできる検査になりました。コロナを疑った患者さんにおいては保険点数も付けられるようになりました。そうした検査技術の進歩により、2021年は全国的にもパラインフルエンザ3型の流行が見られていることが分かってきています。

パラインフルエンザ3型の症状は、1型2型同様クループ症状を起こしやすいですが、RSウイルスのような喘鳴を来す細気管支炎を引き起こすこともあります。特に初感染の場合はだいたいのウイルス感染症と同じで、重篤な症状になりやすいことも知られています。

RSウイルスと区別すべきところとして、パラインフルエンザウイルスのほうが高熱を来しやすく、場合によっては一週間ほど高熱が続くのに対して、RSウイルスは比較的微熱傾向で、一週間くらいしてから肺炎になってから高熱になることが多い印象があります。(例外もあります)まず高熱が出て、そこから少し遅れて咽頭痛や咳、そして喘鳴が出てくるパターンが多いです。肺炎は5-6日してから出てきますが、予防できる方法はありません。

診断と治療

診断は、患者さんの鼻腔ぬぐい液を用いて、多種類のウイルスや細菌の同時PCR検査を行うことによってなされます。検査自体も保険適応になりましたが、すべての病院でできるわけではありません。検査ができない場合は臨床診断になりますが、実際はRSウイルス感染症などとの明確な鑑別は不可能です。

治療も対症療法のみです。喘息症状が強く出ていれば、喘息の治療を主に行います。肺炎症状が強く、さらに細菌の二次感染も疑われるような場合には、二次感染に対して抗菌薬が使われることがありますが、パラインフルエンザ自体には抗菌薬は効きません。

適切に解熱薬を使用し、去痰薬等を使いながら、対症療法を行い、自分自身で治るしかなく、根本的な抗ウイルス療法はありません。ワクチンもありません。

予後は?

パラインフルエンザウイルス感染症は高熱が続いたり、ケンケンという咳がきつくなったりゼイゼイする可能性もある風邪ウイルスですが、特段重症化しやすいということはありません。長くても一週間程度で熱は下がり、症状も落ち着くはずですが、経過が長い場合には肺炎や中耳炎などを合併している可能性もありますので、小児科に相談しましょう。

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