新型コロナ感染症に対するイベルメクチンの効果

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新型コロナ対策でワクチンの必要性が叫ばれる中、とても期待の持てるニュースが飛び込んできました。以前から新型コロナ感染症に有効かもしれないと言われていたイベルメクチンというお薬ですが、世界中の大規模研究の結果から、この病気の特効薬への期待が高まっています。詳しく見ていきましょう。

現在使用されるCOVID-19治療薬

COVID-19治療薬については以前の記事にも書いていますが、いずれも効果は限定的であったり、使用が重症者に限られていたりして、万人に適応があり、有効性が高い治療薬はいまだないと言えます。ステロイドや免疫抑制剤は中等症以上の患者に有効とされていますが、あくまで対症療法の一環であり、根本的にウイルスを排除したり減少させるような効果はありませんし、免疫抑制の副作用によって、また新たな懸念も出てきます。

その中で現在注目されているのがイベルメクチンです。

イベルメクチンって?

イベルメクチンは1980年代後半に、疥癬という寄生虫の一種、またはフィラリアという寄生虫の治療薬として使用されており、その歴史からも安全性が高いことは保証されています。また、内服薬であること、安価であることなどから、COVIDパンデミックの中、中南米で広く使用されるようになりました。

最初の臨床試験

このイベルメクチンの効果を主張する最初の論文は、米国南フロリダの4つの関連病院で行われた観察試験です。イベルメクチン投与群173例の死亡率が15.0%に対して、非投与群の死亡率は107例の25.2%であり、イベルメクチン投与群の成績が有意(p=0.03)に優れているというものでした。また、重症者に限っていうと、重症者のイベルメクチン投与49例では38.8%の死亡率であったが、対照群の非投与26例では80.7%であり、イベルメクチン投与群が有意差(p=0.001)をもって優れているという成績でした。

その後臨床試験が世界中に広まる

その後、世界中で治験が進み、現在全世界約30か国で、100件程度の治験が進行しつつあり、世界中での治療成績のデータが集まりつつあります。

本年2月27日までに、登録と非登録を合せて42件の対象、患者約1万5千名の臨床試験の成績が報告されており、それらの成績のバイアス要因を除外したメタ分析により、早期治療では83%,、後期治療で51%の改善が認められたということです。さらには、イベルメクチンは内服することで発症予防の効果もみられるということで、発症予防効果は89%の改善が認められているということです。

ただ、現場の医師が手ごたえを感じていても、製薬会社や社会情勢のいろいろな思惑により、イベルメクチンの臨床試験は企業主導ではなかなか進まず、そのために多額の金額で行う大規模試験がなかなか行われにくいという背景があり、今日にいたっています。

イベルメクチンの作用機序

イベルメクチンがどのように作用することによって新型コロナウイルス感染症に有効となるのでしょうか?

もともと、イベルメクチンはエイズウイルスやデングウイルスなどのウイルスの増殖に関わるインポーティンという物質を阻害する働きがあることが分かっていました。エイズウイルスやデングウイルスはコロナウイルスと同じRNAウイルスであり、コロナウイルスも同様に増殖を阻害されるということが突き止められました。

また、ウイルスが細胞に付着する部位であるACE2受容体に結合し、ウイルスと細胞の接着を阻害するとも言われています。さらに、サイトカインストームを抑制し、COVID-19の重症化を防ぐと言われています。

その他、世界中で発表されている論文

2021年2月の時点で、世界中で登録されている治験の表を示します。

(出典;イベルメクチンのCOVID-19に対する臨床試験の世界的動向【総説】、THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS、八木澤守正他)

出典元の総説によれば、表中の18件の試験の中で、13件は判定項目についてイベルメクチン試験群が対照群に比して有意差をもって優れていたという結果が出ている、とあります。

これらひとつひとつの論文はまだ数が少なく、またバイアスと言われる、医学的な偏りがあるものもありますが、そのバイアスをなるべく取り除き、これらの結果を統合したメタ解析の結果が出つつあり、死亡率、症状改善、症状悪化、回復に要した期間、PCR陰性化までの期間、入院期間、ICU入室又は人工呼吸器装着の必要性についても、全ての解析においてイベルメクチン群が優れているとの結論が得られているものもあるということです。

課題は

イベルメクチンの効果については、まだWHOや米国FDAが認めるところまでは到達していません。また、当初、イベルメクチンの使用が検討されたとき、従来の投与量では到底治療域の濃度に達することができないだろうという見方が強く、現在でもそのことを指摘する論調もあります。まだまだこれからたくさんのデータが発表されることになるため、そのひとつひとつを検証し、バイアスを排除し、正しい結論を導き出すまでには時間がかかるでしょう。

また、日本でも開発元の北里大学が主体になり臨床研究が進められていますが、まだまだ治験対象者が集まっていない状況です。今後の知見の集積が期待されます。

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