新型コロナワクチンについて①

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早ければ2月から接種開始になる新型コロナワクチンについて、今分かっていることをまとめていきます。(適宜更新)

新型コロナワクチンの種類

2021年1月現在、先進国で認可が済み、ある程度の安全性が確保されている中で、日本人への接種の可能性が高いワクチンは3つです。

Pfizer(ファイザー)社(アメリカ) BNT162b2  mRNAワクチン

Moderna(モデルナ)社(アメリカ) mRNA-1273  mRNAワクチン

Astrazeneca(アストラゼネカ)社(イギリス) AZD1222  ウイルスベクターワクチン

いずれのワクチンも、すでに一般への接種が始まっている国があります。そして、有効性についても検討されており、9割以上の「発症抑制効果」があることが分かっています。この「発症予防効果」というのは、無症状の人は基本的には入れていません。そして9割の効果というのは、例えば10人の感染者がいたとして、その10人がもしワクチンを打っていたら、感染者が1人になるだろうという効果です。単純に9割の確率でかからないよ~というものではありません。

いずれのワクチンも筋肉注射で、一般的に3-4週間の間隔をあけて(製品によって異なる)、2回の接種が基本です。

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチン

mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンという言葉が聞きなれない人がほとんどだと思いますので、すこし説明します。

ワクチンの作用機序

ワクチンの考え方とは、人間の免疫細胞の記憶力を利用して、標的を効果的に記憶させ、次に遭遇したときには素早く認識してもらい免疫機構発動を促す、というものです。

標的を記憶させるために、今までは、標的を弱毒化したり(生ワクチン)、標的を無毒化して、体に入れたりしていました(不活化ワクチン)。体内に入れたウイルスの一部を免疫細胞が記憶しやすくするように、アジュバントと言われるような物質をくっつけたり、早急に分解されないようにしたり、いろいろな工夫も必要でした。

体に入った標的は、その特徴的な部分を記憶細胞に認識され、そこに対する抗体が作られます。この抗体を作る細胞は、一部保存され平時は眠っていますが、次に同じ形をした部分を認識すると、覚醒して増殖し短期間で一気に大量の抗体を作るようになります。これで、その病気にならない、あるいはかかっても軽症ですむということです。

今回のコロナワクチンもおおまかな考え方は同じなんですが、「なにも標的そのものを入れなくてもいいのでは?」という考えから開発されています。例えば生ワクチンの場合は、弱毒化しているのですが、場合によっては病気そのものが発症してしまうこともあるし、免疫力が弱っている人への接種は禁忌です。それに対して、不活化ワクチンは異物として認識されなければ、記憶細胞に記憶してもらえず、ワクチンの効果が薄くなってしまうという懸念もありました。それに、効果を高めるためにワクチンに様々な添加物を含ませることにもなるので、その添加物に対するアレルギー反応が問題になることもあります。

では、コロナワクチンはどのように作用する?

では、どうするか、ということですが、標的そのものを投与するのではなく、標的の特徴的な部分の形を作るために必要な「遺伝子」を体内に入れ、体内の細胞に標的と同じ構造を作らせる、ということが考案されました。材料も体内のものを使うので、アレルギーの心配も減って安心(でも、全くないわけではありません、念のため)。ゲノム解析が格段に進んだからこそできる新世代ワクチンといえるかもしれません。

今の技術を持ってすれば、ウイルスの単純な構造を指定する遺伝子を合成するのは簡単なことなのだそうで(このへんは私は門外漢)、しかも大量生産も比較的安価で可能。もちろん、ウイルスと同じ構造とは言っても、ただの殻だけなので病原性もなく、免疫細胞に認識されたらすぐに分解されてしまいますので、基本的には無害です。

ウイルスの遺伝子が体に入って大丈夫?

遺伝子の本体であるDNAの遺伝情報(ゲノム)は細胞の核の中にありますが、実際はすべてが常に発動しているわけではなくて、休んでいるところ、活動しているところがあります。活動しているところは、mRNA(m:メッセンジャーのm)という、部分転写装置が作られていて、これが核の外に出てある部分で働き、タンパク質の合成が行われています。部分転写装置は使い捨てなので、使用後はすぐに分解されてしまいます。

mRNAワクチンは、合成したい部分に対する部分転写装置だけを細胞内に届けるので、核内に取り込まれることも、間違ってDNAに組み込まれてしまうこともありません。むしろ、すぐに分解されてしまう大変不安定な物質なので、精製がとても難しいのと、届けたい細胞に届けることが難しかったのですが、脂質の膜のようなもの(もちろん無害)に包んで届ける技術が開発され、この問題もなんとかクリアして実用化がかなった、というわけなんです。

ちなみにもうひとつのウイルスベクターワクチンというのは、この遺伝情報の運び屋として、無毒化したウイルス(アデノウイルスなど)を使用しています。つまり、アデノウイルスの遺伝子に、合成したい部分の遺伝子を組み込み、人間の細胞内に取り込ませることによって、遺伝子の情報によって細胞内でタンパク質の合成が開始されます。ウイルスの遺伝子はそもそも核内に入らないので、これも安全に使用することができます。

つまり、mRNAワクチンもウイルスベクターワクチンも、効率的に細胞内に標的ウイルスの一部の遺伝子をいかに取り込ませるか、ということに着目したワクチンだと言えます。

副作用は?

では、気になる副作用についてですが、今のところどのワクチンも、大きな有害事象は報告されていません。アメリカで接種開始した時期にアナフィラキシーが数件報告されましたが、現時点では100万接種に11人程度の発症率で、他のワクチンと比べて特別多いというわけでもなさそうです。

また、局所の疼痛や腫れなどの軽微な症状に関しては80-90%でみられたという報告があり、程度問題もありますが、針を刺して薬を注入する以上はある程度は避けられない副反応になります。さらに、発熱や倦怠感などの全身症状も50-80%にみられるということで、インフルエンザワクチンなどの通常ワクチンに比べると、副作用は出やすいといえます。ただし、通常数日以内に治まり、解熱鎮痛薬などで対応可能です。

1回目接種でアナフィラキシーなどの大きな副作用がなければ、2回目の接種も完了して大丈夫です。

アレルギーに関しては、PEG(ポリエチレングリコール)を含有しているので、この物質に重篤なアレルギーがある場合は禁忌になります。PEGは広く薬剤として使われており、便秘薬や様々な内服薬や注射薬に含まれています。

抗体依存性感染増強反応について

今まで開発されたワクチンの中でいくつか、ワクチン接種によって体内に抗体ができた後にその病気に感染した場合に、免疫反応によってより症状がひどくなってしまう、という病態が確認されています。デング熱ワクチンがその一例ですが、2003年にアウトブレイクしたSARSに対するワクチンでも、サルにおいて同様の事象が細胞レベルで起こっている可能性が指摘されており、同じコロナウイルス属である今回の新型コロナウイルスについても懸念されています。

しかし、昨年末から多くの人が接種しており、現時点ではそのような反応の報告はありません。

まだ効果は不明なところが多いのも事実

実際、個人に接種して、その人への効果があるのはまず間違いなさそうですが、
・他者への感染リスクを減らせるのかどうか
・無症状感染も防げるのかどうか
・接種してからいつまで効果があるのか(毎年2回打つのか、生涯で1度でいいのか、など)
などと言うことに関してはまだ不明な点が多いです。

さらに、今現在ターゲットとなっている外殻のタンパク構造が変化した変異株が出てきて、ワクチンそのものが無効になる可能性もあります。もしかしたら、インフルエンザみたいに変化を予測して、毎年ワクチンの内容を変化させなければいけなくなるかもしれません。

さらには、10年~数十年という単位でみたときに、人体にどのような影響を及ぼすのかについても不明で、これは今後接種した人の経過を追っていくしかありません。マイナスの事象が起こるかもしれないし、思わぬ副産物で他の病気まで予防できたり棚ボタが起こる可能性だってあります。

ただし、今の時点では、少なくともハイリスクの人に関しては、接種をためらうほどの大きな問題はないのではないか、と思われます。

(1月20日以降、必要あれば更新します)