地方都市感染症指定病院の現状⑥

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コロナ感染が流行しだしてから、1-2か月に1回、病院の現状を報告しているシリーズです。

今までの記事
地方都市感染症指定病院の現状①
地方都市感染症指定病院の現状②
地方都市感染症指定病院の現状③
地方都市感染症指定病院の現状④
地方都市感染症指定病院の現状⑤

一般外来の様子

外来や検査・手術はいつも通り(もしかしたら検査がずっと滞っていた分、通常よりも多いかもしれない)の件数でずっと行われています。東京や大阪での感染拡大が止まらないという報道が多くなるにつれて、やはり一般の外来の数は減っています。ちょっとした症状なら我慢しようという世間一般の人の気持ちの現れだと感じています。

減少が顕著な小児科

特に小児科に関しては、やはり世間でコロナが増えてくると、反比例して激減するというパターンです。7~8割減、というところでしょうか。開業医さんはそこまでではないにせよ、5割程度減っているところが多数というアンケート結果もあります。感染症指定病院ということで、コロナの受け入れを行っている総合病院や感染症指定病院はその中でもとりわけ、小児科の減少率が大きいと言われています。やはりこれが続くと、もう閉院してしまおうというところがちらほら出てきているし、大病院でも採算が取れないので小児科をやめてしまおうというとところも出てきていると聞きます。

通常この時期に流行するRSウイルスを疑うような症状の子供はほとんどいないし、発熱の子にインフルエンザの検査をしても全然陽性にならないし、胃腸炎もほとんど流行っていません。みんなの感染対策がこんなにも功を奏しているんだなぁと心底感心しています。

インフルエンザの予防接種は案の定、高齢者が最初に殺到したのもあって、すぐに予約が取れなくなり、追加も入ってこないため、予防接種外来もいったん落ち着いてしまいました。

発熱外来の様子

発熱外来はどんどん増えていて、1日10人以上という日もたくさんあります。うちの病院は特に予約制限を設けていないので、受診者のお断りはしていませんが、日によっては2-3時間お待ちいただくこともあります。PCR検査は、ある程度希望もきけている状況で、あまり制限なくやっていると思います。行政検査は医師の判断で無料でできるため、「え!ただならやっていこうかな。。」みたいな人もいて、利益なしで1回18000円くらい経費がかかる検査なんで、税金がどんどん使われていくのを見ているのは少しなんだかなーと思ったりします。そろそろ保険で少し患者負担を増やしてもいいのではないだろうか、と個人的には感じています。

そして、検査をする中で陽性者の数も確実に増えてきています。ほぼ毎日、陽性者が出ます。それも、明らかな濃厚接触者でなくても、受診時点では感染経路が不明の人も多くいて、とりわけたいした症状のない人でも「え!あの人が陽性だったの!」と結果報告を聞いてびっくりすることも。症状も多彩で、咳や味覚障害だけでなく消化器症状も強かったり。若い人は大抵1-2日の発熱で終わっていて、高齢になればなるほどダラダラ症状が続いている印象。あと、味覚嗅覚障害はかなりの高頻度で陽性になります。職員の検査もそこそこやっていますが、まだ誰も陽性にならないのが怖い。。

ますます身近になっている印象あり

外来でも、「こないだ家族全員かかりましたー大変でした(笑)」みたいな人が来たりと、本当に身近になってきています。

当地域でもコロナでも入院できず自宅療養になっている人が大勢いて、病状が悪化したり、悪化しそうなときに診れる、または入院させてあげられる医療機関がないのが問題になっています。

コロナの重症者を診ている医療機関は本当に大変だと思います。

小児科は、重症者がほとんど出ないので、外来が楽な分、いつもよりも平和な冬です。今のところ。ただ、感染対策のせいで1人の患者さんに検査ひとつするのもめっちゃ手間取られるので、暇というわけでもないです。

うちなんかは小児科の受診が減っても病院が傾くことはないですが、全国の小児科のクリニックの経営は絶望的だと思います。コストもかなりあがっていますし。今年はまだ暖かいのでこれからどうなるか分かりませんが、でも、インフルとコロナの患者がわんさか、ということにはならなさそうかな、というのが今の読みです。もちろん備えはしていますけどね。

こんなふうに科によって、地域によって、医師はいるのに、腕もなくて自分の持ち場も離れられずなかなか前線の手助けができない、というのももどかしいことです。

ひとつだけ気がかりなのが、南アフリカで見られているコロナ変異種。小児にも感染する可能性が指摘されています。今まで、小児はかかっても無症状あるいは極軽症、周りに感染させないことだけを考えればよい、という状況だったのですが、仮に小児が重症化しだすと、それこそ医療も教育も崩壊します。

小児科の受診控えについて思うこと

小児科の受診控えについては、これまでどれほど、「念のために」という感じでの不要な受診が多かったか、ということを痛感させられます。小児科医のほうも、「今日は’本当に来るべきだった症例’は1例もなかったな」と思いながら外来を終えることも多くありながら、特にそれを保護者に伝えてきませんでした。無くても治ったであろうお薬をもらって、満足して、また病院に足を運ぶ、ということ自体が悪循環と言えるかもしれません。ここにきて、「あ、風邪って病院いかないでも治るじゃん」と思った人は多いと思うし、それでいいとも思います。小児科医は、ホームケアのスキルを伝えていくのが主な仕事だ、という私の持論はずっと変わりません。そして、ホームケアのスキルが上がれば、当然無駄な受診がなくなるはずです。

ところが、小児科という科のもうひとつの特殊性は、「代替わりする」ということです。今の時代のママさんたちはいやがおうにもスキルアップしたとしても、またどんどん新米ママさんが出てくるために、小児科医が変わらなければ、また数年したらもとに戻ってしまうかもしれません。一体どれほどの小児科医が残っているのかは分かりませんが。

そうならないように、小児科医一人一人の意識の改革が必要なのかもしれません。

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