コロナ抗原検査の弊害

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現在、コロナウイルス検査については抗原検査とPCR検査の選択肢があります。より簡便な検査として、抗原検査も各所で施行可能となりましたが、意外な落とし穴があります。

PCR検査よりも簡便な抗原検査

PCR検査は検査対応数が当初に比べてかなり増えたので、東京や大阪のような大都市圏の流行地以外では、それほど検査数が飽和している様子もなく、検査を受けたい人に対して、あるいは検査したいと医師が思ったときには、滞りなく検査が施行できているように思います。(検査の承認を受けている施設に限ります)

しかし、PCR検査は結果が出るまで最低でも半日、行政検査では1日程度はかかるので、救急搬送されてきた患者や、入院となる患者さんがコロナではないかどうか確認したりするといった、「とりあえずの検査」として抗原迅速検査が利用されています。

もともと抗原迅速検査はPCRよりも不確実と言われており、いわゆる「陰性確認」には使うべきでない、つまり、結果が「陰性」であったとしても、それを単純に信じ込んではいけない(=偽陰性の可能性がある)ことは以前から指摘されています。

しかし、最近は偽陰性ではなく、「偽陽性」となる症例数が増えており、それによる社会的混乱も問題視されるようになってきました。

厚生省のコロナウイルス抗原検出用キットの活用に関するガイドラインを読むと、PCR検査との陽性一致率、つまり、抗原検査もPCR検査も陽性となる確率は、おおよそ67%程度であると記載されています。つまり、抗原検査で10人陽性になったとしても、そのうちの3-4人は実はPCR検査では陰性。もちろんPCR検査の偽陰性の可能性もあるでしょうが、多くの場合、PCRが陰性であれば新型コロナ陰性として取り扱うことになるでしょう。

PCR検査と同時に検体を採取した場合、抗原迅速陽性であれば、PCR検査の結果が帰ってくるまでの約1日間は、「コロナ疑似患者」として、個室隔離となり、病院の職員も相応の防護をしての対応をせざるを得なくなります。また、周囲の人も、「疑似症例の濃厚接触者」として、一旦隔離措置が必要になります。当然、仕事や学校の登校などにも制限が出るため、社会的にかなり混乱を来します。

また、入院となる症例では、特に小児科の場合は、付き添いの人もまったく部屋から出られなくなるので、トイレ付き個室が空いていない場合は、入院自体が困難になります。実際に小児科で先日あった症例をご紹介します。

「念のため」の検査で陽性になってしまった症例

子どもさんは発熱なしの触れ込みでの受診でしたが、医療サイドは一応ゴーグルとマスクの標準予防策は講じて診察していました。

喘息発作と診断され、酸素化も悪かったので、入院して喘息治療しましょう!ということになりました。ところが、そうこうしているうちに外来で熱も上がってきました。入院の際には、スクリーニング的な意味合いで迅速検査を導入している病院が多いです。陰性確認には使えないとはいえ、検査前確率が低いところに検査も陰性であれば、ある程度の安全性は確保できるという考えの下です。この患者さんも入院での対応を決定するにあたり、念のためコロナ迅速検査もやっておきましょう、ということになりました。

(うちの病院では、発熱患者の入院患者は念のためコロナ迅速検査&PCR検査の両方を慣習的にやっています。抗原検査は陰性確認には使えない、ということは重々承知なのですが、それでも、病棟にコロナを持ち込まれて院内感染を起こすリスクは少しでも減らしておくほうがいいという考えのもと、現時点では院内でPCR検査ができない限りは、こうするしかないからです。PCRも必ず同時に行い、臨床所見も加味して総合的に判断します。)

この症例では、報告で見るコロナの臨床症状とは全然違うので、「まさか(陽性に)出るわけないでしょ」という気持ちで検査しましたが結果はなんと「陽性」!

そこから、医師も看護師も、入院を受け入れる病棟も、「疑似症」として受け入れる準備を急ピッチで行わなければいけませんでした。

違うと思いつつも「陽性」になってしまったからには、子供はもちろん、付き添いの大人も一歩も外に出られないので、トイレつき個室を空けるしかなく、空きがないならすでに入っている人を移動させるか、転院させるしかありません。その他にも、医療従事者が入る際に見に付けるエプロンや手袋などを部屋前に一式設置、部屋内にそれらを破棄する専用のごみ箱(結構大きい)の設置、食事はディスポーザブルの皿に変更して部屋内で破棄、高頻度接触部位の定期的な消毒作業、そして吸入処置等をする際にはN95マスクの装着、などなどの対応の追われました。

これに加え、同居している父親やきょうだいも自宅から出られない状態となり、事態は困難を極めました。着替えなども持ってきてもらえないからです。

患者さんである子供の着替えの洗濯物などの取り扱いや、付き添いの人の交代時には他の患者さんと接触しないように経路確保、その他もろもろ、すべての対応が超~めんどくさいことになります。自分の身の保清ができる大人と違って、子供の入院時はさらに何倍も手間がかかり対応も大変になります。

翌日のPCR検査の結果は・・・

一応は上記対応はしましたが、臨床的にはコロナは考えにくいと判断していたので、翌日のPCR検査結果を待ちながら、PCRが陰性であればすぐに隔離解除とする方針に決めていました。運よく翌日早めにPCR検査結果が出て、予想通り「陰性」だったので、これを全面的に信用して、1日も経たずに感染対応解除となりました。ただ、状況によってはPCRの陰性結果すら信用できないこともあるかと思うので、そうなれば退院までずっと「疑似症例」として対応しなければいけなくなります。医療従事者の手間やコストは莫大なものになり、家族の対応も保健所と相談しながら都度決定していくことになります。

もっとも、当然のことながら、検査が偽陰性で真の感染者が解き放たれるよりはよっぽどましなのですが、それでも本人はさておき保護者や関係者の心配や心労はいかほどであっただろうかと思ってしまいます。

そんな症例が数例立て続けになったので、迅速検査も使いどころを考えなくてはいけない、と思っています。

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