乳幼児の低身長について【医療機関でする精密検査について】

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乳幼児の低身長

市町村の乳幼児健診では、毎回体重や身長を測定され、母子手帳にある「成長曲線」という欄に値が点で記入されます。

色が付いている、いわゆる正常範囲内に入っていれば問題ありませんが、そこから外れてしまうと、「病院で検査を受けてください」と言われてしまう場合もあります。

乳幼児の低身長のときに、どのような症状があれば早めの受診が必要か、また、病院でする検査はどのようなものか、まとめてみました。

低身長の定義

母子手帳に「成長曲線」という表の記載があります。

「成長曲線とは、日本人の同年齢の平均身長と、その誤差範囲(標準偏差)を示した表で、この正常範囲から外れていたら、低身長と診断できます。また、医師が診察する際には、標準偏差(SD)値よりSDスコアを計算し、-2SD以下を低身長と診断します。

「成長曲線 厚生労働省」の画像検索結果

この値から外れているからといって、自動的に全例が異常というわけではありません。例えば、出生週数が少し早めだった子供さんは、早く生まれてきたぶんだけ、満期の子供さんよりも小さいのは当たり前で、いわゆる「早産児」にあたる子供に関しては、「修正週数」という考え方があり、満期までおなかの中にいたとして、早く生まれてきた分を現在の週数から差し引いて成長を考えることがあります。

SGA(Small for Gestational Age)

また、出生時の在胎週数によっても、標準の体重というものが定められているので、そこからの標準偏差が大幅にマイナスである場合には、SGAという診断が付随します。つまり、SGA児は、おなかの中にいるときからずっとちっちゃかったですよ、という意味で、SGAのうち90%は3歳くらいまでに標準まで成長が追い付きますが、残りの10%は成人になっても身長が低いことが分かっています。SGA性低身長という診断が付けば、後に成長ホルモン補充療法の対象になります。

成長率

また、乳幼児では測定の時点での身長体重だけでは評価できないことがあります。それは、成長率です。特に乳児から幼児にかけては人生の中でも一番成長発達が著しい時期ですが、この時期に相応の成長率が達成できない場合も、異常であるとみなされます。乳児では2-3か月、それ以降は半年から1年単位での身長の伸び(成長率)を計算し、-1.5SD以下を成長率の低下と診断します。

成長率の算出は少し専門的になりますが、日本小児内分泌学会の成長曲線を見ると異常かどうかだいたいのことが分かります。成長曲線には、正常範囲の中に、さらに細かい7本の線が引かれており、この線に沿わずまたいでしまうような場合には、成長率が低下していると言うことができます。

日本小児内分泌学会HPより引用

低身長の診断の手順

・成長記録

これまでの身長・体重の測定値を年齢ごとに身長体重曲線に点で記載し、標準値とどれだけ離れているか、どこから成長が止まっているかなどを評価します。毎月とまでは言いませんが、せめて2-3か月に一度程度の測定結果があれば判断やしやすくなります。

・予測身長

target height(将来どれくらいまで身長が伸びるかの予測値)を計算する。
男子=(父親の身長+母親の身長+13cm)÷2
女子=(父親の身長+母親の身長-13cm)÷2

・全身のバランスの診察

四肢の長さのバランスはどうか、四肢が短ければ軟骨異形成症やくる病など、肘が外側に曲がる外反肘や翼状頸があればTurner症候群などの染色体異常はないかどうかなど、プロポーションで診断に結びつく疾患の除外をします。必要であれば、染色体の検査を追加することがあります。

・血液・尿検査

一般血液検査と検尿。貧血や栄養状態、肝腎機能、Caなどの電解質を評価します。内分泌学的検査として、成長ホルモン(GH、IGF-1)、甲状腺や性腺ホルモンなどを測定します。また、糖尿病や酸性尿などがないかもチェックします。

・手のレントゲン写真

子どもの手の骨(手根骨)の形や数は、月齢や年齢によってほぼ決まっています。ホルモン影響などで成長が遅れると、この手根骨の成長にも障害がでるため、骨年齢を評価することにより成長障害があるか診断できます。

受診の際に準備するといいもの

・出生時の記録(自然分娩or帝王切開,分娩時間,母体も含めた合併症など)
・母子手帳や幼稚園・保育園での身長・体重の変化の経緯
・ご両親の身長や簡単な成長歴
・受診日は朝食は食べても構いませんが、脂質を多く含むものはなるべく控えましょう

異常はなかったけど、じゃあどうしたら?

初診時の検査によって、異常値が見つかれば、さらなる精密検査の対象になります。
異常値が見つからなければ、そのまま低身長の経過観察を続けます。3か月に1度程度の受診で、身長・体重の増加を観察していくことになります。

体重の伸びが悪くなる時期

一般的な検査をして異常がなかったのでホッとしたのはいいが、じゃあ対策の立てようもないじゃないの、将来に渡って背が低い子になったらどうしよう、と心配される保護者もいらっしゃると思います。

0-1歳台は特に、離乳食の進み具合だったり、運動発達の程度だったり、病気の罹患具合などによって、相対的にカロリーが不足して、体重増加が滞ることが多いです。ときには半年程度体重の伸びが見られない場合もありますが、1キロも2キロも体重が著しく減少していない限りは、大きな心配はいりません。

だいたい停滞する目安は、離乳移行期で運動発達が著しい8-10か月頃、それから自我が芽生え食欲以外の欲求が増えてくる1歳半から2歳台くらいです。この時期には、数か月体重が変わらないこともありますし、保育園入園と重なれば、病気もたくさんするので体重が減ったりすることもあります。

体重がしっかり増えなくても身長が伸びていればまず問題ありません。体重が増えなくなってから、身長の伸びも停滞してしまった場合はまずカロリー不足が考えられます。フォローアップミルクなどでカロリーや鉄分・Caなどの栄養素を補ったり、間食を上手に利用しても構いません。

ただし、食べさせようとお母さんが躍起になればなるほど、子供は反発して食べなくなったりもするので、気もちをおおらかにもつことが重要です。大人になるまでずっと全然食べずに成長できない人はいません。子どもによっては食べるより楽しいことがたくさんあって食べている場合ではないのかもしれません。必要な栄養は1日単位で考えるのではなく、3日や一週間単位でも構いません。今日食べなければ、明日以降で食べたらいい、くらいの余裕を持ってあげると、いつの間にか時間が解決してくれるはずです。

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