発熱があるとき、どのように熱の原因を診断していくのでしょうか?熱の原因究明の思考回路を探ります!
熱が出た!そのときにまず考えるべきこと
熱が出る、ということは体のどこかが、なんらかの理由で炎症を起こしていると考えられます。その際にまず考えるべきことは3つあります。
まずは、
①どの臓器が炎症しているのか?
熱の原因は、どこの臓器の炎症なのかをまず最初に考えると分かりやすいです。炎症がある臓器にはかならずなんらかのサイン(症状)が出ているはずです。例えば、上気道に炎症があれば、鼻水や咽頭痛が出ますし、下気道(肺や細気管支)に炎症があれば、咳や痰が多くでてくるでしょう。また、腹部臓器であれば、腹部の痛みが出てくるのが普通ですし(肝臓は例外です)、子宮や卵巣の炎症ということもあり得ます。さらには、骨や筋肉の炎症でも痛みが出ることがほとんどですし、皮膚の炎症が発熱の原因であることもあります。尿路であれば腰の痛みや排尿時痛が出ることもあります。医師は詳細な問診と、触診や視診などの身体所見から、熱の原因であろう臓器を絞っていきます。
場所がある程度絞れたら、エコーやCTなどの画像診断を使って、病変部の様子を描出します。
次に考えるべきことは、
②感染性の炎症か、非感染性の炎症か。
炎症のある臓器の特定がある程度できれば、今度はその臓器は感染しやすい臓器か、あるいは自己免疫などで炎症しやすい臓器か、それとも両方起こりやすい臓器なのか、だいたいの予想が付けられます。そして、その部位から分泌物などが得られる場合は、その分泌液を採取します。例えば気道の炎症で痰がたくさん出ているなら痰を採取し検査しますし、尿路の感染が疑われれば尿を採取します。腹痛があり下痢が続いているのならばその下痢を採取することもあります。そして、検体は振るいにかけて細菌がいればそれを抽出したり、細菌培養を行って増やしたりします。ここで細菌が検出されなければ、細菌感染の可能性はぐっと低くなりますが、ウイルスはこの方法では検出できないので、ウイルスを強くうたがえばPCR検査を行うことになります。(ただしPCRはどこの施設でもできるわけではありません)
自己免疫などによる炎症では、治療は経過観察あるいはステロイド等の免疫抑制剤になりますが、感染治療と非感染治療は治療が全く逆方向なので、診断は慎重にしなければいけません。
③感染の場合、原因となる微生物は?
感染となると、原因は細菌かウイルスかで大きく治療方針が分かれます。
細菌が検出された場合には、抽出し、特別な染色を行って顕微鏡で観察することによって、ある程度の菌種を判別することが可能になります。菌種の当たりが付けば、だいたい選択されるべき抗生剤も決まってきます。
ウイルスが疑われる場合は、抗体検査などで把握するしかありませんが、結果が出るのが数日以上かかるのと、どちらにせよ治療薬がないものがほとんどなので、対症療法で経過を見ていくしかない場合が多いです。
また、通常の市中感染では見られないような細菌が検出された場合には、宿主の免疫力の低下が疑われ、そこから大元の病気が見つかることもありますし、ウイルスの場合も然りです。
複合感染にも注意が必要
風邪症状がありつつ尿路感染が隠れていた、中耳炎が隠れていた、というのは小児科でよく経験することです。もっとひどい場合は、髄膜炎が風邪症状でマスクされていることもあったりするので、ひとつの熱源に惑わされず、しっかり全身を観察することが重要になります。
特に小児科の場合は、小さい子であれば特に、自分の症状をうまく表出できない場合も多々あるので、一つの熱源の可能性を見つけても、きちんと他が否定されるまでは全身の検索を続ける必要があります。