組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)について

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あまり聞きなれない病気だと思いますが、意外に日常に潜んでいる病気でもあります。今回は珍しいリンパ節炎のひとつ、組織球性壊死性リンパ節炎について解説いたします。

組織球性壊死性リンパ節炎の概要

この病気は1972年に日本人の菊池・藤本らによって報告されたところから名前が付けられたので、菊池病あるいは菊池藤本病ともよばれています。以前は亜急性壊死性リンパ節炎と言われていましたが、最近はその病理組織の特徴から、組織球性壊死性リンパ節炎というのが正式な名称として広まっています。

好発年齢はだいたい20歳から30歳代までに多いと言われていますが、子供や高齢者でも発症事例は報告されています。また、男性:女性の比率は1:2で女性に多い病気としても知られています。原因はよく分かっていませんが、何らかの感染が機会となって、免疫異常が起こるのではないかと言われています。

症状

組織球性壊死性リンパ節炎の特徴は、「繰り返す発熱」とそれに伴う「リンパ節腫脹」です。リンパ節腫脹の部位は頸部が最も多いと言われていますが、ときに全身のリンパ節が腫れる場合もあります。リンパ節の腫脹部位は多くは疼痛を伴います。そして、数日間の症状ののち、自然に消退する良性の疾患です。人によっては数週間あるいは数か月のペースで繰り返します。

診断

まずこの病気は、疑わなければ診断ができません。血液検査では決定的な所見はありませんが、多くは白血球減少や貧血を伴います。また、LDHという値が上昇したり、血沈が亢進したり、といった、比較的特徴的な所見が現れます。ただし、血沈などは特にこの病気を疑って検査をオーダーしなければいけないので、まずは鑑別にあげることが大事になります。

確定診断は、腫脹しているリンパ節の生検です。生検といっても、メスを入れるのではなく、針ですこしだけつついて検体を採ってくることで検査ができますので、局所麻酔で行える検査です。ただし、小児では全身麻酔が必要になることもしばしばあります。

鑑別診断

組織球性壊死性リンパ節炎とよく似ている病気として、まずは化膿性リンパ節炎が挙げられます。子供では特に、頸部リンパ節腫脹があれば、化膿性リンパ節炎か反応性リンパ節炎を疑います。化膿性リンパ節炎は、リンパ節に細菌感染を起こす病気であり、抗生剤で治療を行います。

反応性リンパ節炎は、風邪などのウイルス感染等に伴い感染巣周囲のリンパ節が腫れる状態で、これは元になっている病気が落ち着けば自然に消退します。

また、発熱とリンパ節腫脹を伴う病気で、小児科として特に気を付けなければいけない病気が川崎病です。川崎病の場合は、血液検査で炎症反応が高値になったり、Naや血清たんぱくが低下したりするのと、皮膚症状や冠動脈症状など他の所見が出てくるので、経過観察を行う中で自然と除外できます。

あとは、咽頭炎を起こすEBウイルス感染症やサイトメガロウイルス感染症なども鑑別に挙がりますが、血清の抗体値などを調べることにより除外できます。

経過

一般的に経過は良好で、この病気の診断さえついていれば、無投薬で経過観察を行っていると自然に消退します。他の病気との決定的な違いはここにあります。上記の疾患の治療が効かないのと(自然に消退するので一見効いていると勘違いすることもありますが)、治療にも関わらず発熱とリンパ節腫脹のエピソードを繰り返すので、特徴的な病歴から疑うことができます。ただし、本人にとってみれば、発熱と頸部の痛みが数日は続き、しかもそれが繰り返すので、かなりの負担にはなりますね。再発率は15%とも言われています。炎症が強い症例にはステロイドを使用することもあります。

また、一部(報告では0.5%から2%程度)ではありますが、免疫の暴走に歯止めが効かなくなり、血球貪食症候群という病態になると重篤な経過をたどることがあります。

合併症

一般的には予後良好の疾患ですが、繰り返す症例は時折自己免疫疾患を合併することがあり、一度は自己抗体などを測定する必要があります。また、数年かけて自己免疫疾患を発症する可能性もあるので、継続的なフォローが必要になる場合もあります。

珍しい病気ではありますが、意外に日常に潜んでいる場合もあると思われるので、自分に当てはまるなと思ったら、かかりつけ医に相談してみるといいと思います。

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