子供の潰瘍性大腸炎

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現職の首相が病気で辞職されるということで、にわかにこの病気が話題ですが、大人だけでなく子供にも発症しうる病気です。このブログでは特に子供の潰瘍性大腸炎についてまとめました。

潰瘍性大腸炎とはどんな病気?

潰瘍性大腸炎とは、文字通り大腸の粘膜に潰瘍とともに炎症が起こる病気です。同じような病気にクローン病というものがありますが、主に二つ合わせて「炎症性腸疾患」と呼ばれるカテゴリーの病気です。

好発年齢は比較的若年の20歳前半での発症が多いと言われていますが、小児の発症も稀ではなく、ときに乳児期から発症するものもあります。この病気は近年になって日本で増加しており、一説には食事の欧米化が関与していると言われていたり、家族内・血縁内の発症集積があることから、遺伝的な要因が指摘されたりしていますが、はっきりとした原因はまだ分かっていません。

潰瘍性大腸炎の症状は?

潰瘍性大腸炎の主症状は頻回の血便または下痢、腹痛、そして体重減少です。病勢によって血便の程度は異なり、軽いものは下痢だけの場合もありますが、病勢が進行するとほとんどの場合はっきりとした血便や、粘度の高いジャム状の粘血便が見られ、それに伴い発熱、体重減少や強い腹痛が起こり、血便の程度によっては貧血を来すまでになります。腹痛も、通常の腹痛とは異なり、しぶり腹といって、排便前に耐えがたいほどの強い腹痛が波のように押し寄せます。さらに、免疫疾患であり関節炎や皮膚の発疹など、全身の他の症状も合併しやすいことが知られています。

潰瘍性大腸炎の診断は?

潰瘍性大腸炎の診断基準を示します。以下のa)およびb)・c)のいずれかを満たし、かつ除外すべき疾患を除外したものが潰瘍性大腸炎と診断されます。

a)臨床症状:大腸に持続性または反復性の粘血・血便がある。
b)①内視鏡検査での特有の所見がある(粘膜の多発びらんや出血、白苔など)
②注腸X線検査での特有の所見がある。(粘膜表面のびらん、潰瘍、でこぼこなど。または大腸のひだの消失など)
c)内視鏡検査での生検組織学的検査:内視鏡の検査時に、一部の粘膜を採取し、病理診断を行います。病理学的所見として、粘膜層の炎症細胞浸潤が見られます。

<除外すべき疾患>細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクタ腸炎、大腸結核、クラミジア腸炎などの感染性腸炎。

これらの感染性腸炎は主に便培養検査によって診断されますので、様々な検査とともに便培養検査は必須になります。さらに、同じ炎症性腸疾患であるクローン病、または薬の副反応による薬剤性大腸炎なども鑑別に上がります。

ここまで書いてお気づきだと思いますが、これらの検査を小児の患者さんに行う場合、一般病院ではまず不可能です。小児の体格にあった内視鏡を備えている施設自体が少ないのと、一般の小児科や消化器内科では特に乳幼児の内視鏡は不可能ですので、この病気を疑った時点で地域のこども病院など、大きな施設への紹介が必要になります。もちろん注腸X線検査も同じで、所見を判読するのにも小児の消化器疾患に精通した、専門機関で行うことがまず最低条件になります。中学生くらいになると、体格は大人に近づくので、一般の消化器内科でも対応できるところが増えますが、静脈麻酔で鎮静をかけたりする必要があり、小児科と消化器内科の連携が必要になります。

潰瘍性大腸炎の治療は?

潰瘍性大腸炎はかつて、あまりいい治療法がなく、ステロイドを長期的に使用して合併症が起こってしまったり、ステロイドから離脱できなくなってしまったり、炎症がひどいときには大腸を全摘出する症例があったり(現在もありますが)、患者さんは非常につらい治療を強いられていましたが、近年は5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製剤というお薬が開発され、非常に治療効果が良いとして、軽症から中等症までの患者さんはだいたいこの5-ASA製剤が第一選択薬として用いられます。このお薬は内服が可能で、副作用も少なく、腹痛や血便の症状にもよく効く上、再発も抑えてくれるとてもいいお薬です。この5-ASA製剤で治療効果が得られない場合には、上記のステロイド剤が使われます。また、ステロイドから離脱できない症例では、免疫抑制剤が使われることもあります。ま

た、最近は生物学的製剤の抗TNFα受容体拮抗薬なども効果があることが分かってきました。しかし、これらのお薬は、多くは小児には未承認であり、大学などの研究機関で治験が行われたりしていなければ、希望しても治療を受けることができません。さらにこれらのお薬は注射のお薬で、数週間毎に通院の必要がること、そして免疫抑制剤もそうですが、学校生活などに大きな支障を来す場合が多くあります。

さらに、病勢が強い場合には自分を攻撃する白血球を除去する治療が行われる場合もありますが、小児ではほとんど行われていません。

上記のような薬物療法でコントロールがつかない場合には、大腸全摘出が行われ、人工肛門増設がなされる場合もあります。特に小児では全大腸に渡って病変がある症例も多く見られること、また発症後数年経つと大腸がんのリスクが高まることもあり、内科的療法を行いながらも十分に粘膜の状態の経過観察が必要です。

潰瘍性大腸炎の予後は?

近年いい治療薬が出てきていることもあり、潰瘍性大腸炎の予後は決して悲観するものではありません。しかし、乳児期に発症する潰瘍性大腸炎は、免疫疾患など他の病気を合併している場合も多く、さらにステロイドや免疫抑制剤、生物製剤等を使用することから、感染症には十分な注意が必要です。

早期発症型の場合、治療を開始すると生ワクチンの予防接種全般が受けられなくなるため、特に水痘や麻疹などが治療中重篤化しやすいこともあり、予防接種スケジュールも十分に考慮する必要があります。

また、思春期になると親とのコミュニケーションが密に取れなくなり、排便状況なども把握できずに親の気づかないところで病状が進行していることもあります。生活にも制限が多くかかるため、精神発達に支障が出るケースや、お薬や栄養状態により成長障害が出る場合もあります。

また、ストレスも病勢に大きく関与するため、思春期では受験などのプレッシャーで悪化する症例もありますし、病勢によっては就職にも影響を及ぼします。また、二次性徴に影響がでる場合もあります。体が完成している大人と違って、子供の症例はよりデリケートなので、身体的、心理的に様々な面からのサポートが必要になります。

小児科外来ではどのように診察するか

実際に診療をしていて、専門病院でなければ潰瘍性大腸炎の子供を診断することは稀です。思春期以降増える病気ですが、同じ頃に繰り返す腹痛や下痢を起こす疾患として、過敏性腸症候群というものがあります。これは炎症性腸疾患とはまったく違い、ストレスから腹痛や下痢などを起こす良性の疾患ですが、この病気と診断するまでには必ず炎症性腸疾患も念頭において診察します。子供が頻回に腹痛を訴えると親としては辛いですが、やはりなんといっても炎症性腸疾患と比べて腹痛の程度が軽いのと、血便などを伴わないこと、体重減少を伴わないこと、などが診断の決め手になります。もちろん疑わしい症例では内視鏡検査を行うこともありますが、内視鏡検査を行えば、まずは除外できる病気です。

また、一時的に血便を来す病態で一番多いのが、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌感染性腸炎です。血便を主訴に受診した際には、まず行われる検査です。海外渡航歴などがあればアメーバ赤痢なども疑われます。また、食中毒の一種でO-157などの腸管出血性大腸炎の診断が下る場合もあり、この場合はまた別の意味で子供で重篤になりやすいので、しっかりと診断して治療を行う必要があります。

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