学校検尿の落とし穴

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学校検尿は何のためにやっているのか?

学校検尿は年に1回、学校の児童を対象に一斉に行う尿検査です。見ている項目は、蛋白尿、血尿の有無です。検尿異常から「慢性腎炎」という病気を早期に発見できるということで、莫大な資金を投入しながら行われていますが、世界的に見ると、集団尿検査をやっている国は日本くらいです。そして、集団尿検査自体に意味はあるのか、議論されています。

蛋白尿とは

その名の通り、尿に蛋白成分が出てしまう状態です。腎臓は通常、血液から老廃物をこしとって尿をつくる際に、蛋白質は通しません。なので、尿に含まれる蛋白はないか、あっても微量であるはずです。ところが、糸球体という腎臓のろ過装置に異常がでると、蛋白成分がダダ漏れになって、蛋白尿がでることが分かっています。この糸球体に炎症を起こすのが「腎炎」と言われる状態です。

蛋白尿が出たら何が困るのか

蛋白は体のいろいろな役割をつかさどるもので、免疫だったり栄養分だったりします。これが急激に漏れてしまうと、免疫力が低下したり、体が低栄養になったり、パンパンにむくんでしまったりと様々なトラブルが引き起こされます。ところが、微量の蛋白が漏れていても、体は蛋白を生成して補充するので、ほとんど症状がでません。ところが補充できている間は問題ないかというと、そうではありません。

蛋白が一定以上漏れる「慢性腎炎」の状態は、放っておくと、腎機能の低下を招きます。そして、腎機能が代償できないところまで下がってしまってはじめて、尿がでなくなったり、毒物をすてられなくなり中毒症状が出たりします。

「慢性腎炎」は早期発見し早期治療をすることで進行を遅らせたり、治癒させたり、いろいろな対策を練ることができます。学校検尿はこうしたことを目的に行われています。

蛋白尿が出ている場合どうするのか

学校検尿で行う検査はあくまで簡易検査なので、蛋白がどれくらい漏れているのか、はっきりとした数値でわかるわけではありません。

蛋白の有無は、尿に検査紙をくぐらせ、紙の色の変化で1+~3+(あるいは4+)まで見ることができます。

蛋白が1+が続く場合は、1年以内に精密検査
2+が続く場合は、半年以内に精密検査
3+が続く場合は、1-3か月以内に精密検査  が必要と言われています。

また、血尿を伴っていたり血液検査で蛋白の値が低くなっているなどの異常があれば、早急に精密検査が必要です。

精密検査とは、腎臓の一部を取ってくる「腎生検」と言われる検査です。腎生検をするためには入院が必要で、なおかつ、どこででもできる検査ではないので、大学病院などの専門施設で行う必要があります。低年齢などの場合によっては全身麻酔が必要になります。

起立性蛋白尿の除外が必要

少し風邪気味だったり、走り回ったりすると、正常な子供さんでも少しだけ尿に蛋白がおりることがあります。これを「起立性蛋白尿」といいます。起立性蛋白尿を除外するために、尿検査の前の日はもう寝るぞ!というときに、しっかり排尿して膀胱内を空っぽにしておく必要があります。お風呂の影響で蛋白がおりることもあるので、お風呂もすませてください。そして、朝起きて活動しはじめる前のおしっこをとってやることで、しっかりとした検査をすることができます。

血尿は?

今までは蛋白尿のお話ばかりでしたが、血尿はどうでしょうか?実は、血尿でひっかかる子供さんのほうが圧倒的に多いのですが、実は血尿の意義はあまりないと言われています。家族性血尿の患者さんは意外に多いですが、これは腎臓の障害に結びつかないと言われています。近い将来、血尿のチェックは検尿項目から外されるかもしれません。

学校検尿での見逃しを防ぐために

これまで書いてきたように、学校検尿は、「慢性腎炎」による腎不全の以降を早期発見により食い止めることを目的に行われています。ところが、蛋白尿が早期から出ない腎臓病の存在が問題視されるようになってきました。それは、「先天性尿路異常」といって、生まれたときから、腎臓や尿管、膀胱、そして尿道といった尿路のどこかに異常がある場合です。この場合には蛋白尿を来さず、エコーやCTなどで偶然見つかる場合や、腎不全兆候が出てから見つかるものも多いです。ところが、今の学校検尿の項目では、先天性尿路異常は見つけることができないのです。

先天性尿路異常は、検尿で「慢性腎炎」が早期に発見されるようになった現在、小児の慢性腎臓病や透析などの腎不全に至る原因として最も多くなっています。症状はあまり出ないことも多く、おねしょの持続や、尿漏れ、尿路感染症で見つかる場合や、他の病気の精査の際に見つかることが多いですが、尿の濃縮障害があると言われているため、検尿に「尿の濃度(浸透圧)」という項目をくわえるべきだ、という意見が専門家の中で広がっています。

学校検尿、あなどるなかれ!

子供がおしっこの容器を持って帰ってくると面倒くさくて憂鬱になりますが、毎年検尿でしっかり病気が見つかって早期に治療できている子どもたちがいます。しっかり検査を受けて、病気の早期発見・早期治療につとめましょう。

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