マダニが媒介する怖い病気、重症熱性血小板減少症候群について

sponsor’s link

前回の記事で、マダニの咬傷についてご紹介しましたが、マダニは非常にたくさんのウイルスによる感染症を媒介することで知られています。その中でも、2011年に発見された新しい病気、重症熱性血小板減少症候群について、書いていきます。

重症熱性血小板症候群(SFTS)とは

SFTS; Severe fever with thronbosytopenia syndrome という頭文字を取って和訳してつけられた名前で、哺乳類を宿主とするウイルスが、2011年に中国ではじめて分離され、SFTSウイルスと名付けられました。ウイルスを保菌する宿主の血を吸ったマダニが、その次に吸血した際に、ウイルスを排出して新しい感染が成立してしまいます。

マダニが媒介する他の病気として、クリミア・コンゴ熱というものがあります。クリミア・コンゴ熱も、SFTS同様に血小板減少や出血を来す病気ですが、この病気の原因となるクリミア・コンゴ熱ウイルスと、SFTSウイルスは同類のウイルスであることが分かっています。

SFTSの発症頻度

2011年にウイルスが分離・特定されて以降、日本でも年間60-80名程度の報告があります。発症地域は関西以西に集中しており、春~夏にかけての報告数が多いです。その病態の認知度が上がるに従い、症例報告数も徐々に増加しています。症例自体は関西に集中していますが、SFTSウイルスをもったマダニは北海道以南全国で確認されており、野生動物が媒介するため、発症のリスクは全国であるといってよいでしょう。

国立感染症研究所の発表によれば、発症元の中国では、2011年以降、計3500名ほどの症例が報告されています。小児には少なく、40歳以上の農業従事者に症例が多いことが分かっています。

早期診断ができるようになってから、致死率も低下傾向となっていますが、いまだに10%以上の方が亡くなる怖い病気です。

SFTSの症状

SFTSになるとどのような症状がでるのでしょうか。

まず、マダニに刺されてから発症するまでの潜伏期間はおおよそ10-14日、そして発熱、全身倦怠感、リンパ節腫脹、筋肉痛といった症状が出現します。発熱は必発で、倦怠感と筋肉痛は5割程度に見られます。消化器症状も高率に合併し、下痢、嘔吐、腹痛などの症状は8割以上の患者さんで認められます。

血液検査では、白血球の減少や血小板の減少が見られ、重篤になると出血症状を来します。出血症状が進むと、全身の臓器の働きが悪くなり、死に至ります。

一度この病態を発症してしまうと、あとは対症療法(症状に対する治療)しかできず、有効な手立てはまだ分かっていません。一般的な抗ウイルス薬である、リバビリンが治療に使われたこともありましたが、疫学研究では救命率の上昇や、症状の改善にはつながらなかったということです。

国内では、5歳の小児例が1例のみ報告されていますが、一般的には高齢者に多く、小児は軽症となる傾向があると言われています。

中国では、SFTSの患者を診療した医療従事者の二次感染が確認されています。血液検体採取時や、気管内挿管を行う際にマスクや防護具を付けていなかったり、無くなったあとの処理をした方にも感染したりと、排出するウイルス量が多ければ多いほど二次感染の危険性が増すため、疑い症例では十分な感染予防対策を行う必要があります。

マダニの合併症を防ぐためには

マダニの合併症を防ぐためには、まずマダニに刺されない対策をするのがなによりも大切です。稀な合併症ではありますが、常にその危険性にさらされていることを理解し、草むらに入るときには長袖や靴下などでしっかり皮膚露出を抑えることが重要です。

関連記事;マダニ咬傷について

sponsor’s link

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする