子供によく使われる抗生剤のまとめPART2
PART1の続きになります。小児科外来でよく処方される抗生剤をまとめてみました。医師は一体なにを想定して処方しているのか?解説します。
マクロライド系
主にマイコプラズマなどの感染症を想定して処方されるお薬たちです。副鼻腔炎などにも適応があるため、耳鼻科でもよく処方されます。
小児科でも頻用されるお薬で、マクロライド系の処方率は60%以上です。その分胎生化率も高く、マイコプラズマの耐性化率は報告によっては80%にもなります。
また、肺炎球菌の耐性率もだいたい8割以上と高く、ヒブなどへの効果も低いです。
細菌のタンパク質合成を邪魔することによって、細菌の活性を抑える働きがあります。活性を抑えますが、細菌を殺す力はありません。
また、細菌への直接的な効果のほかに、副鼻腔炎などにも長期的に出すことがあります。気道や気管支の繊毛(細かい毛)の働きを改善する作用や、抗炎症作用があることも知られています。
エリスロマイシン
成分名:エリスロマイシン
適応:皮膚感染症、リンパ節などの深部感染症、尿路感染症、中耳炎、百日咳、破傷風など。
昔からある古いお薬ですが、性感染症である淋菌などの治療にも使われることもあります。結構にがい味がするので、かなり飲みにくい部類のお薬です。
クラリス/クラリシッド
成分名:クラリスロマイシン
錠剤と細粒がありますが、小児用は薄いピンク色をした細粒で、やや苦味があります。先発品はそうでもないですが、後発品は飲めたものではありません。錠剤が飲める子には、小児用の錠剤があります。1日2回でいいお薬です。
適応:肺炎、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎、百日咳、破傷風など
使いやすいお薬で乱用されたこともあり、マイコプラズマのクラリシッド耐性率は50%を超えると言われています。
ジスロマック
成分名:アジスロマイシン
3日間1日1回飲んで一週間の効果があるお薬です。週1回の投与ができる製剤もあります。苦味が非常に強く、内服はなかなか困難です。特に、柑橘系のジュースと混ぜてしまうと、本当に飲みにくいです。
テトラサイクリン系
こちらも相当古い歴史のあるお薬ですが、上述のように、マイコプラズマの特効薬と言われたマクロライド系のお薬が効かなくなってしまってから、8歳以上の子供には身長投与を原則として、テトラサイクリン系のお薬が処方されることがあります。
ミノマイシン
成分名:ミノサイクリン
適応:小児では、マクロライド耐性のマイコプラズマ以外ではあまり使用されません。
細粒はなく、錠剤のみで、点滴製剤もありません。
副作用:8歳以下で、永久歯がまだしっかり育っていない時点で服用すると、歯牙の黄染(黄色く着色すること)が起こってしまうことがあります。一度着色してしまうと、白い歯には戻りません。
キノロン系
非常に広域の菌種に有効な抗生剤です。
オゼックス
成分名:トスフロキサシン
小児に適応のある唯一のキノロン系。薄いピンク色で、イチゴ味。錠剤もあります。ミノマイシンが使えない低年齢で、重症マイコプラズマ感染のときに使われるべきお薬ですが、その飲みやすさ・広域で使いやすい(?)という点から、2010年発売以降、乱用される傾向にあります。
カルバペネム系
本来カルバペネム系は、その化学的な構造としては、PART1に出てきたペニシリン系やセフェム系の仲間になりますが、ここではあえて、後ろに持ってきました。
というのも、前述のニューキノロン系とこのカルバペネム系の抗生剤は、超広域の菌種に有効なのと、このお薬しか効かない菌種が存在するために、本来ならば温存しておくべき「最後の砦」です。
オラペネム
成分名:テビぺネムピボキシル
適応:肺炎、中耳炎、副鼻腔炎など
そう、ピボキシルが出てきました。つまりこのお薬も、長期投与で特に子供に副作用が強く出てしまう部類のお薬です。確かによく効くお薬ですが、来るべきときにそなえて温存するべきものです。
ややオレンジがかった細粒で、イチゴ味で飲みやすいです。
オラペネムはもともと、多剤耐性菌による難治性中耳炎の治療薬として開発されたもので、耳鼻科の先生がよく好んで出しているのを見かけます。
いろいろな状況で処方される抗生剤をまとめてみました。また、新たなものがあれば追記していきます。