経口免疫療法の実際

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経口免疫療法ってなに?

食物アレルギーがあり、特定の食物を摂取できないという人はたくさんいます。以前は、そのような場合は、その食物を摂取することを禁止し、そのまま大人になってもずっと摂取できないというような人もいました。現在では、方針が180度転換され、「少量ずつ、食べられる量を食べていく」というガイドラインが作成されています。

(参照記事;食物アレルギー、不要な除去を続けていませんか?)

特定の食品が食べられない、と諦めるのではなく、少量ずつ摂取していって、アレルゲンに対する耐性を獲得しようという治療が、食物の経口免疫療法です。

今回は、食物の経口免疫療法についてのお話しです。

経口免疫療法の実際

経口免疫療法には、緩徐法と急速法の二種類があります。

緩徐法は比較的自宅での管理も可能な、中等症以下の食物アレルギーの場合に行います。アナフィラキシーになるような重症の場合は、エピペンを処方したうえで急速法が適応されます。

緩徐法

該当する食物を、はじめは耳かき一杯程度、牛乳などの液体であれば0.5~1mlずつなどの少量摂取し、そのまま少しずつ増量していきます。まずとっかかりとなる量のアレルゲンを摂取できることが大前提で、耳かき一杯程度でもアレルギー症状が強くでてしまう場合には、適応されません。アレルゲンの摂取は基本的には1日1回とします。

まずごく少量のアレルゲンを摂取し、じんましんなどのアレルギー症状が続けて3回でなかったら、次のステップに進みます。次のステップは、前回の量から約20%ほど増量した量を摂取させます。そして、また3回程度症状がでなければ、また増量、、という具合です。(参照; 食物アレルギー除去解除の方法(鶏卵編)

増量中どこかで症状が出るかもしれませんが、症状が出た場合は、その前までの段階に戻してまた数回症状がでないことを確認し、大丈夫そうであれば、また増量する、ということを繰り返していきます。

こうしてゆっくり増量していくことで、しんどい症状も出にくいですし、自宅でもできるので子供さんや親べの負担、病院受診の回数も抑えることができます。

ただし、病型がアナフィラキシーになりうる可能性が高い場合は、危険なので緩徐法といえど、自宅での増量は勧められません。

急速法

急速法は、病院で入院した状態で行います。小さいうちに緩徐法で耐性を獲得できなかったような重症例が適応です。エピペンを持っていることが前提になります。

基本的には約2週間の入院が必要で、一日に数回、該当するアレルゲンの食品を摂取します。当然、症状は出るのですが、少々のじんましんや咳であれば、処置をしながらそのまま負荷を続けます。

だいたい2週間で、ゆでたまごなら半量以上、ミルクも10ml以上摂取できるようになりますが、退院後もリスクを背負いながら、毎日負荷を続ける必要があります。負荷をやめてしまうと、せっかく耐性を獲得しつつあったものがチャラになってしまい、それまでの努力が水の泡になってしまいます。

こうした治療を行うためには、専門病院との密な連携、そして家族となによりも本人の頑張りが不可欠になります。また、摂取しても大丈夫という閾値も、その日の体調などによって左右されることがあります。2017年にアレルギー専門病院で指導された重症アレルギーの子どもが、自宅で免疫療法を継続中にアナフィラキシーを発症して死亡するという痛ましい事故が起きました。かなり稀なケースではありますが、こうしたことがあるので、急速法にはいまだ賛否両論あるというのが現実です。

ダニやスギではもう普及している免疫療法

他の記事でもご紹介していますが、ダニやスギではすでに免疫療法として使用する薬剤やその投与量も決まっています。こちらも副作用で中断せざるをえない場合もありますが、重篤な食物アレルギーと比較すると、まだ安全に行うことができる治療です。

少しずつ摂取して体質を改善していくということで、免疫療法として共通しています。

治すだけでなく、安全域を広げるための治療

食物アレルギーにおいて、こうした免疫療法は、完治を目指すものもありますが、はじめの目標設定として、「安全域を広げる」ということに重きを置きます。

重症アレルギーの子は、常に誤食(間違ってアレルゲンとなる食物を食べてしまうこと)のリスクにさらされています。特定のアレルゲンには表記義務がありますが、義務がないものもありますし、子供にとってはいちいち表記をみることも難しい場合もあります。また、惣菜のお弁当などは、アレルゲンの表記がされていないものがほとんど。さらに、バイキングなどの外食では、そのものにはアレルゲンが入っていなくても、前のお客さんによって隣の料理のトングが入って食物が混入することもあります。また、隠し味的に使用して、一見全然わからないものもたくさんあります。

誤食のリスクはこのように無限にあるなかで、摂取回避できるのが一番ですが、万が一摂取してしまっても、命の危険にさらされるような重篤なアナフィラキシーを起こさないように体質を改善していくことも並行してい進めていけたらなおよいです。

重症アレルギーがある子供さんは、治すための治療だけでなく、少しなら耐えられる体をつくる治療も選択肢の一つとして考えていく必要があります。

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