加工肉の発がん性について

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加工肉と赤身の肉には発がん性がある!?

このたび、国際がん研究組織(IARC)の発表において、赤身の肉あるいは加工肉に発がん性がある、という発表がなされました。(ここでいう赤身の肉とは、いわゆるサシのない赤身肉、ということではなくて、牛・豚・羊などの動物の肉全般を指します)

イギリスの研究者によれば、これらの加工肉や赤身肉(いわゆる獣肉)に対して健康税を導入することで、加工肉や赤身肉の消費が減り、世界中の死亡率を9%も減少(毎年22万人以上の死亡の抑制)させられ、さらに、医療費も14%(約400憶ドル)も減少できるという試算がでています。

このことについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

摂取する肉の量と大腸がんの関係

世界では、肉の摂取量と、大腸がん発生について調べた研究が数多くあります。

有名なものをご紹介します。

45歳から74歳の約8万人の方を、数十年間前向きに追跡した調査があります。この調査れは、肉類の摂取量と、大腸がんの発症率との関連が調べられました。追跡期間中、1145例の大腸がんが発症しましたが、肉類全体の摂取量が多いグループで、大腸がんのリスクが高まることが示されました。具体的には、男性で100g/日以上、女性で80g/日以上の摂取をするグループでリスクが高まることが分かりました。

平均して1日100g以上の肉を食べる、という生活を想像してみてください。毎日ステーキ、焼き肉、ハンバーグ、トンカツ、という食生活をしている日本人はあまりいないはずです。カレーや餃子、焼き魚や煮魚も美味しいし、唐揚げや中華だってある。日本の食生活は豊かで多岐に渡ることが多いため、一概にこの基準に当てはまるわけではありません。こうした研究は、欧米の食生活を基準にしているものが多いため、そもそも肉をたくさん取らない人種・食生活であれば、あまり問題ないとも言えます。

この研究でも、男性で100g/日以下、女性で80g/日以下の食肉であれば、大腸がんのリスクは高まりませんでした。食べるとしても、少量であればいいということも分かります。

国際がん研究組織(IARC)の発表では、赤身の肉の摂取はがん発症に関連する「であろう」として、「Group2a」と判定し、一番リスクが確実とわれる「Group1」の次に危険性があるグループという分類になりました。

加工肉の大腸がんの関係

一方で、IARCの発表では、ハム・ソーセージなどの加工肉は「Group1」、つまり、確実に発がん性があるもの、という位置づけで、このGroup1には他にアスベストや喫煙、ヒ素、カドミウムなど、そうそうたる物質が並びます。

加工肉の発がん性に対する論文も日本内外で発表されていますが、日本の論文の概要をご紹介します。

 35歳以上の男女約3万人について赤身肉・加工肉の摂取量と、大腸がんの発症率について約8年間の前向きの追跡調査を行いました。加工肉はハム・ソーセージ・ベーコン・焼き豚としました。

その結果、男性では加工肉を最も多く摂取した群(中央値20.3g/日)が、最も少なく摂取した群(中央値3.9g/日)に比べ、大腸がん発症のリスクが85%有意に高かったことが分かりました。中間の群(中央値9.3g/日)は21%高かったが統計学的には有意差はではなかったということでした。
一方、女性では、摂取量に関わらず有意差は認められなかったとの結果でした。

ちなみに、この研究では一日に飲むコーヒーの量も一緒に解析されていましたが、女性のみ、コーヒーを1日1杯以上飲む群が、飲まない群に比べて約45%も大腸がんの発症リスクが低かったことが分かっています。

コーヒーはさておき、加工肉20g/日というのは、ハム2枚程度であり、日本人でも簡単に摂取できる量でもあります。朝にパンとソーセージ、あるいはハムなどを摂取している日本人も多いでしょう。上記の研究も、日本人を対象とした研究であるため、加工肉の摂取量には十分注意する必要がありそうです。

加工肉は、塩に漬け込み、保存性を高める工程を経ていることも多いですが、日持ちさせようとする分、添加物も多く使用することになります。おそらくは、使用される添加物が発がん性を持つものだと思われますが、詳しい物質に関してまでは分かっていません。

必要以上に過敏にならないで!

ニュースでは「加工肉の発がん性」という見出しが出ます。ところが、その報道のもとになった論文の内容までは深く触れられないことが多いです。要は、いろいろな食品をまんべんなく摂取するのがよいということで、今日からハムやベーコンを絶つ必要はありません。正しい情報を入手し、報道に翻弄されないようにしたいものですね。

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