「お好み焼き症候群」について

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「お好み焼き症候群」について

症例

10歳女児。
夕食後、お菓子を食べながら散歩していたら突然むせて咳込みと呼吸苦が出現。呼吸が吸いにくい症状が悪化してきたため、救急車で来院。

受診時
血圧80/58 意識もうろう
顔面蒼白 末梢冷感あり
肺野全体で喘鳴 断続的な咳込みあり
肺音左右差なし
眼瞼に浮腫あり
顔面に膨疹(じんましん)あり、次第に全身に拡大

直前に食べていたお菓子は、以前から何度も摂取して問題のなかったものであった。

食物アレルギーなし、ハウスダストとスギ・ヒノキ花粉のアレルギーあり。

診断は?

この症例の診断は、「アナフィラキシーショック」でした。

すぐにアドレナリンの筋肉注射とステロイド薬や抗アレルギー薬の点滴を行い、無事に呼吸苦などの症状は早期に消失しましたが、その後観察入院が必要になりました。

アナフィラキシーの原因となったものは何だったのでしょうか?

直前に食べていたお菓子は、以前から何度も食べていたものであり、突然アレルゲンとなる可能性は極めて少ないと考えられました。ところが、病歴をよく聴取すると、夕食時にお好み焼きを食べた、ということでした。さらによく聞くと、お好み焼き粉は「開封してから数か月経過」しており、「常温」で保存されていたとのこと。

問題は、このお好み焼き粉にありました。

常温保存の粉類には注意が必要

以前、某有名番組で取り上げられ、一躍有名になった病気ですが、「パンケーキ症候群」と呼ばれる病気です。これは、保存状態の悪い小麦粉などの粉の中に、ダニが発生し、もともとダニアレルギーのある人がこの粉を調理したものを摂取すると、強いアレルギー症状を発症するというものです。海外ではおしゃれに「パンケーキ」ですが、日本、そして特に関西では「お好み焼き症候群」あるいは「タコ焼き症候群」と呼んでもいいかもしれません。

ダニアレルギーは、一般的には「吸入」アレルゲンなので、気道を刺激するために鼻炎や喘息症状が主体となるものですが、この症例のように、もともとダニアレルギーをもっている子が、アレルゲンであるダニを大量に体内に摂取することで、アレルギー症状の最重症型であるアナフィラキシーを発症してしまう危険性があります。

このことから、小麦粉やお好み焼き粉などは、必ず密閉し、常温ではなく、冷蔵で保存することが重要で、なおかつ開封してからはなるべく早く消費しなければいけません。

ダニアレルギーは現代病

もともと、日常生活でそれほどアレルギー症状を自覚していない人でも、血液の反応上は、ダニアレルギーがある方が現代では非常に多いです。ですので、「自分は大丈夫だろう」と思っていても、ダニの大量摂取によって意外に強い症状がでることがありますので、十分注意してください。

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