乳児特発性僧帽弁腱索断裂について

sponsor’s link

乳児特発性僧帽弁腱索断裂について

元気だった赤ちゃんに風邪のような症状が数日でたあとに、急変してしまう病態があります。今回は「乳児突発性僧房弁検索断裂」について解説します。

発症のしかた

生後4−6ヶ月くらいの乳児に、数日間発熱や咳などの風邪症状があった後、突然呼吸困難が起こり、全身の血のめぐりが悪くなり(=循環不全)、急速に悪化してしまいます。

兆候としては、風邪症状に引き続き、顔色不良、手足の冷感とチアノーゼ、心拍数や呼吸数の増加、ひどくなれば意識障害が比較的短時間に一気に起こります。春から夏にかけてよく起こり、ほとんどの症例が日本人です。

検査と診断

この病気を疑えば、心臓のエコー検査で比較的簡単に診断できます。兆候としては、弁逆流による心雑音が突然聴取されるようになります。

僧房弁という心臓の大事な弁を支える腱が断裂することにより正常に働かなくなり、心臓内の血液の逆流が見られ、全身へ血液を送ることが困難になります。急性心不全と、肺水腫が起こります。早期に診断され、小児の心臓外科手術ができる専門施設での治療がなされないと、急に容体が悪化し死に至る可能性のある病気です。

比較的珍しい病態であることや、小児科医の間でもまだ認知度が低いため、肺炎と誤診され診断や治療が遅れ、対応が後手に回ることが多いです。呼吸状態が悪いので、肺炎を疑いレントゲン撮影を行い、心拡大(あっても軽度)や肺水腫の所見から診断されることもあります。ただ、この病気を念頭に置いて診療していないと、肺炎として治療が始められ、適切な治療が遅れる可能性があります。

とにかく急激に呼吸状態と循環状態が悪化する場合、感染症だけでは説明がつかない病態である場合は本症を疑う必要があります。他に鑑別が必要な病気として、川崎病や心筋炎などがあります。

病因

川崎病などの血管炎、母親由来の抗体や自己免疫による弁破壊、あるいは先天性など、さまざまな説がありますが、まだはっきりとした原因は分かっていません。季節性があること、日本人の発症がほとんどであることなどから、遺伝子の発症素因など今後分かってくることがあると思われます。

治療

集中治療室での管理が前提です。場合によっては人工心肺装置などを使用し、循環状態を落ち着かせたあと、心臓内の逆流所見が改善しないようであれば、早期に心臓の外科的手術を行い、人工弁への置換を行います。

断裂した腱は、変性していたり細胞の浸潤により破壊されていることが分かっています。また、人工弁に置換した後も、違う腱の断裂が再度起こる場合もあります。弁を置換しても、完全に逆流が治らない場合もあり、また不整脈などの後遺症が残る場合もあります。

また、人工弁を入れた場合は、心臓が大きくなるに従いサイズが合わなくなるので、将来的に再手術も必要になります。

家庭での注意点

生後半年くらいまでの乳児で、いつもより明らかにしんどそう、顔色が著しく悪い、手足が冷たい、呼吸がやけに早いなどの症状が揃う場合には、一刻も早く救急病院を受診してください。

小児科医にもなじみが薄い疾患なので、珍しいですが、注意が必要です。ほとんどの小児科医が一生のうちで遭遇することなく医者人生を終えるとは思われますが、ちょっとした兆候を見逃さないように、常に心の片隅に置いておくべきだと思います。

sponsor’s link

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする