エンテロウイルスD68による弛緩性麻痺

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エンテロウイルスD68による弛緩性麻痺

急性弛緩性麻痺の患者の報告が増えており、小児科学会より注意喚起されています。また、2018年5月より、感染症法に基づき、15歳以下の急性弛緩性麻痺と診断した場合には、7日以内に保健所への届け出が必要になりました。

急性弛緩性麻痺の診断の流れとはどのようなものになるか、説明します。

急性弛緩性麻痺とは

急激に起こる、脱力性の麻痺のことです。

麻痺とは、体の一部が動かなくなることですが、実は体がこわばって動かなくなる痙性麻痺と、筋肉が緩んで動かなくなる弛緩性麻痺に分けられます。

神経は、脊髄から末梢神経となってそれぞれの部位に伸びますが、脊髄や末梢神経に感染などが起こると、筋肉を収縮させる神経の機能が落ち、弛緩性麻痺が起こります。

逆に、脳から脊髄までの間に障害が起こると、痙性麻痺となります。

つまり、弛緩性麻痺とは、脊髄あるいは末梢神経の障害を示します。

弛緩性麻痺が起こる病気

・ポリオ(急性灰白隨炎)

ポリオウイルスによる脊髄の感染症。ポリオウイルスも、エンテロウイルスの一種ですが、今話題になっているエンテロウイルスD68とは区別します。ポリオワクチンによって予防されています。

・ボツリヌス症

ボツリヌス菌という細菌が出す毒素により、弛緩性麻痺を起こします。ボツリヌス菌は酸素がない状態でも長期間生存することができるため、はちみつや缶詰の中などに混入して、問題を起こします。

・ギランバレー症候群

風邪などの感冒症状があってから約10日~14日程度で、下肢から上行する弛緩性麻痺が起こります。稀ですが予防接種で起こる場合も報告されています。免疫が活性化し抗体が作られる際に、自身の神経を壊してしまう抗体が産生され、末梢神経の障害が起こります。抗体産生は一時的で、抗体が消費されれば症状は少しずつよくなりますが、上行性の麻痺が呼吸する筋肉にまで及べば、人工呼吸管理が必要になることもあります。

・エンテロウイルスD68による感染後

これが今話題になっているウイルス性の弛緩性麻痺です。麻痺の程度はさまざまで、時には後遺症を残すこともあると報告されています。また、患者は5歳以下の幼児に多いとの報告があります。

エンテロウイルスD68による弛緩性麻痺の診断手順

以前の記事でもお伝えしましたが、エンテロウイルスの診断は、症状だけからは困難であり、ウイルス検出の迅速キットも発売されていないため、今の時点ではすぐにできるものではありません。ただし、2018年5月より、エンテロウイルスD68感染による弛緩性麻痺が全例届け出対象の疾患となったことで、症例の報告が増えています。今までの時点で国内でも80人あまりの子供がエンテロウイルスD68による弛緩性麻痺と診断されているようです。

まず、エンテロウイルスD68による麻痺を疑った場合、なるべく早い段階で(できれば、麻痺の発症初日)に、血液検査、髄液検査、咽頭ぬぐい液、尿、便 を採取しなければなりません。

そして保健所に届け出を行い、保健所主体で地方の衛生研究所などで、ウイルスを検出する検査(PCR検査)を行う病院がほとんどです。(麻疹(はしか)を疑ったときなども同様です。(麻疹の場合は髄液は不要です))稀に、研究室でPCR検査ができる施設もあるので、その場合は数時間で検査結果が出ます。

また、上記に示した病気の鑑別診断も同時にすすめていく必要があります。

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