抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザについて

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新薬ゾフルーザについて

2018年3月、インフルエンザの治療薬として「ゾフルーザ」というお薬が新たに承認されました。発売当時は、すでにインフルエンザシーズンが終わりかけであったにも関わらず、日本の医師がこぞって処方したとのことでした。今シーズンはゾフルーザ独り勝ちの状態となることが各所で予想されています。

新しい薬の効果や作用機序はどんなものなのか、調べてみました。

今までとは違う部位に効くお薬

従来の抗インフルエンザ薬は、「ノイラミニダーゼ阻害薬」と言われるものでした。タミフルであれイナビルであれ、ノイラミニダーゼ阻害薬を、剤型や投与方法を工夫したに過ぎませんでした。

ノイラミニダーゼとは、インフルエンザウイルスが、感染した細胞内で増殖し、外に出ていくときに活用される物質で、細胞から細胞へのウイルスの拡散を防ぐ効果がありました。逆にいうと、増えることは問題なくできていました。

それに対し、ゾフルーザは、「エンドヌクレアーゼ」という、ウイルス独自が遺伝子を複製し増殖していくための酵素を阻害します。この作用により、インフルエンザウイルスは自己増殖を邪魔されることになります。さらに、このインフルエンザのエンドヌクレアーゼは、ウイルス独自のものであるため、人体への影響が少ない、つまり副作用も少ないことも分かっています。

投与方法

ゾフルーザは、1回投与のインフルエンザ治療薬です。発症後48時間以内に飲むというしばりはありますが(増殖しきってからでは効果が薄いということでしょう)、1回だけ飲めば効くということは、患者さんの負担もかなり減ります。タミフルは消化器症状が出て嘔気や嘔吐がでてしまい、飲み続けることが困難になる人も少なくなかったし、イナビルは吸入できているのかどうなのか、不安が残る点もありましたが、この問題を見事に解決してしまいました。

ゾフルーザは夢の薬なのか?

ウイルスの増殖を防げて、副作用も少なく、さらに服用もしやすい。これでは、処方量が増えるのも納得です。もう他のお薬の発売は辞めたら?というように思われるかもしれません。ところが、問題もあります。

ゾフルーザとタミフルを比較した大規模臨床試験について説明します。

これは、日米の患者さんを対象にしたもので、人数にして1400人あまりが対象となっています。対象者を、ゾフルーザ投与群、タミフル投与群、プラセボ(偽の薬)投与群に分けて調査しています。

結果はというと・・・

・発熱などのつらい症状のある期間は、タミフルと変わらなかった。ゾフルーザもタミフルも、発熱を約1日ほど短縮した。

・ウイルス消失までの期間は、ゾフルーザで24時間であったのに対して、タミフルでは72時間、プラセボでは約90時間であった。

・副作用の出現率は、ゾフルーザで約3%、タミフルで約4.4%であった。プラセボ群でも約3%の有害事象を認めた。

というものでした。

まだまだ分かっていない現象も

実はこの他にも、ゾフルーザ特有の問題があることが分かりました。

成人でゾフルーザを投与したうち、約9%程度の人に、「ウイルスの変異」が起こっていることが分かりました。これらの人では、投与前と投与後で、ウイルスの遺伝子変異が起こり、お薬が効かないものに変化していました。(耐性化)そして、この耐性化が起こってしまった群では、お薬が効かないばかりか、有症状期間も約80時間と長くなり、さらにプラセボ群よりもウイルス排出期間が多くなってしまうという結果でした。

ことに、小児においては、約23%に薬剤耐性の変異が起きていたことが問題視されています。小児ではまだまだ投与症例が少なく、正確な値ではないとされています。

このことが、公衆衛生的にどのような影響を及ぼすのか、例えばゾフルーザを投与され耐性化してしまった人が社会に出て、インフルエンザを蔓延させる可能性もあります。また、耐性株が増えてあっという間にお薬が効かなくなってしまう可能性もあります。

このあたりはまだしっかりと原因の解明や対策が決まっていません。

1回投与がゆえに心配なことも

一般的なお薬は、体の中に入ってもある一定速度で分解されていきます。ところが、ゾフルーザは1回投与で長く効くという種類のお薬になりますので、当然、副作用がでたときには、副作用がなくなるまでの時間も長くなってしまいます。

今のところは、重大な副作用は報告されていませんが、まだまだ新しいお薬ということで使用経験も少ないため、これから分かってくるようなものがあるかもしれません。

投与は慎重に

日本小児科学会が発表した「2018/19シーズンのインフルエンザ治療指針」においても、ゾフルーザはまだ使用経験が少なく、(推奨に関しては)検討中」としています。

猫も杓子もゾフルーザ、という状況にだけはならないように、そして、基本的にはインフルエンザは無治療でも十分に治る病気ということを認識して、診療にあたるべきであると考えます。

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