新しいインフルエンザの予防接種について

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インフルエンザワクチンについて

今年もインフルエンザの予防接種の季節になりました。インフルエンザワクチンって本当に効果があるの?という疑問にお答えします。

日本のインフルエンザワクチン

日本で今接種されているワクチンは、インフルエンザウイルスをバラバラにして無毒化した「不活化ワクチン」です。生ワクチンとは違い、予防接種自体でインフルエンザの症状がでるリスクはありません。

ところが、この不活化ワクチンの効果は、みなさんもお気づきだとは思いますが、あまり高くはありません。いろいろな研究がされていますが、インフルエンザワクチンの日本での効果は、予防効果でいえばせいぜい3割程度といったところでしょう。(日本における疫学研究では30%~60%という報告があります)

予防効果のメカニズム~予防効果が低いのはなぜ?~

注射には、バラバラにされたインフルエンザウイルス粒子が含まれています。インフルエンザウイルスの粒子には赤血球凝集素(HA)という特徴的な物質がくっついています。これが体の中に入って異物と認識され、HAに対する抗体(HA特異的IgG)が産生されるため、次にこのHAが入ってきたときに、免疫反応が素早く起こり、を排除する力が強まります。

ところで、インフルエンザウイルスは、上気道の粘膜から体内に侵入し感染を起こします。粘膜でインフルエンザウイルスの侵入を防ぐのは、大部分がIgAという免疫物質です。不活化ワクチンではIgGの産生は促されても、IgAの産生はされないので、感染を防御する作用はないことが分かります。

さらに、インフルエンザウイルスは、その年によって微妙に形を変えてきます。年間で流行するのは2-3種類ですが、この種類を予想して4つくらいの型に対応できるようにワクチンを作ります。しかし、この予想が外れてしまうと、全然効かないワクチンになってしまいます。WHOは地球規模で流行ウイルス株を収集・解析し、毎年2月に北半球向けのウイルス型を、9月に南半球向けのウイルス型を発表、そしてそれにもとづいて、各国がワクチンを開発するという流れです。

もちろん、ウイルスの変化がマイナーチェンジでなく、大幅に変われば、新型インフルエンザとなって、ワクチンも全然効かず、全世界に大流行することもありえるのです。

経鼻タイプのワクチンもある!

先に述べたように、インフルエンザウイルスの体内への侵入を防ぎ、感染を防ぐためには、IgAという抗体の産生が必要です。現行の注射ワクチンでは、IgAの産生は促されず、効果が低くなります。

そこで開発されたのが、経鼻の生ワクチン(フルミスト)です。(日本ではまだ未承認)

弱毒化したインフルエンザウイルスを、鼻に噴霧すると、粘膜での免疫反応が起こり、インフルエンザに対するIgAを産生するようになります。

このワクチンは2003年から、米国や欧州諸国で一般的に使用されています。日本ではまだ未承認ですが、医院によっては医師が個人的に輸入して接種している場合もあります。

注射の痛みもなく、簡単に接種できるのでとても魅力的で、日本でも開発が進んでいたのですが、2013/14シーズンから徐々にワクチン効果が低下してきていると指摘され、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2016/17シーズン以降、同ワクチンを接種推奨リストから取り下げ、日本にも少なからず衝撃が走りました。

ところが、2018/19シーズンで再び推奨接種再開となっています。

接種再開の理由となったのは、発売元のAstraZeneca社が米国で行った臨床試験で、一旦下がっていた予防効果が上昇したからです。臨床試験の内容は以下です。

2~4歳未満の小児200例を対象に、2015/16シーズン用フルミストと2017/18シーズン用フルミストの、AH1pdm09に対する抗体価の上昇率を評価。その結果、1回の接種で抗体価が4倍に上昇した子どもの割合は2015/16シーズン用が5%だったのに対し、2017/18シーズン用では23%だった。接種回数を2回にすると、抗体価が4倍に上昇した割合は12%と45%となった。
(日経メディカル記事より引用)

それでもまだ効果は高くても50%以下です。

日本では第一三共製薬が現在開発中で、数年以内には承認がおりる可能性もありますが、まだまだこのワクチンの効果については、研究を重ねる余地がありそうです。

また、日本国内でも新たな鼻噴霧式のワクチンが開発されている途中です。

鼻噴霧式生ワクチンの問題点

フルミストは現在、日本での承認はおりていません。ただし、医療機関によっては個人的に輸入した製剤を使って予防接種をしているところもあるようです。

そして現在のところ2歳~49歳までの年齢にしか適応がありません。

また、生ワクチンは、インフルエンザ症状を発症する可能性もあることから、持病を持つ人には打てません。また、国内で承認されていないので、ワクチン接種で万が一なにかの損害があった場合、公的な救済は受けられないのが現状です。(製薬会社の保障はあります)

さらに鼻噴霧式なので、鼻炎症状がある場合には、効果が不十分になる可能性があります。

しかし、生ワクチンの利点として、効果が1年程度続くことは大きな魅力であり、何よりも痛くない、効果の高いワクチンとして、今後期待されています。

「貼るワクチン」も開発中!

「パッチ型のインフルエンザワクチン」を開発する試験で、その安全性と有効性が確認されたという研究結果が報告され、医学雑誌の最高峰である「The Lancet」に掲載されました。マウスによる予防効果の実験では、注射よりも効果があったとのことでした。

このパッチ型ワクチンは絆創膏ほどのサイズで、皮膚を貫通するくらいの長さの極めて微小な針が100本付いています。手首に自分で貼り、貼る際に痛みはほとんとないとのことです。その後針は皮膚内で溶けてなくるので、廃棄も自分でできるため、新しいワクチンとして期待されています。

今後、インフルエンザのワクチンのために何度も病院に行ったり、痛い思いをしなくても効果が出るようなワクチンが早く開発されるといいですね。

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