偽膜性腸炎ってなに?
抗生剤の使用により、正常な腸内細菌のバランスが崩れてしまい、一定の種の菌が異常に増えてしまうことで、毒性が強くでて大腸に炎症を起こしてしまいます。
主に、
長期で抗生剤治療を行っている方、特に老人に多くみられ、院内感染も問題になる病気ですが、子供に見られることもあります。
典型的な症例
5歳女の子。
生来健康。
受診前日から発熱あり、おなかを痛がって下痢をしていたが、今朝血便がでたために来院。
2週間前に中耳炎と診断され、抗生剤を処方された。
7日間内服した後、再診したところ治りがよくないので、もう1週間追加処方されていた。
<診察所見>
全身状態は良好。体温38.5℃。
嘔吐、嘔気なし。
間欠的に腹痛あり。腹部は平坦で柔らかく、虫垂部に圧痛なし。
下腹部の痛みが強い。
<検査所見>
血液検査では貧血なし、白血球と炎症反応の軽度上昇あり。
便培養で
偽膜性腸炎の診断・治療とその後の経過は?
実は偽膜性腸炎というのは、内視鏡カメラで直接「偽膜形成」という所見がないと正式には付けられない病名です。ただし、小児は特に大腸カメラを挿入することは困難なので、抗菌薬長期投与後で、便培養で、Clostidium difficileが検出され、血便が出ているという状態では、臨床的に診断することも可能です。偽膜というのは、CDに感染した際に、毒素により腸管壁が破壊され、そこに白血球や細菌が集まって形成されているものです。
便培養は通常一週間程度の日数がかかるため、急性期の診断には適しておらず、CDトキシンの迅速検査で代用される場合もあります。
この症例では、比較的広域のスペクトラムの抗生剤を2週間も内服していたために、比較的診断が容易でしたが、抗菌薬を飲み終わってから1-2週間して発症するような症例もあるようで、診断は必ずしも容易ではありません。
治療
多くは、原因となる抗生剤を中止することで自然軽快します。腸内細菌のバランス機構が働き、CDは徐々に減っていきます。症状が強い場合には、内服薬を投与する場合もあります。CDは特に抗生剤に対して耐性を持っているため、抗生剤の治療は特殊な薬剤を使用する必要があります。通常、バンコマイシンやメトロニダゾールといったお薬が使われることが多いです。
また、院内感染例も多くあることから分かる通り、CDは生体外でも長く生存でき、一般的な消毒にも耐性があります。感染を広げないために、手洗いや周囲の消毒はこまめに行う必要があります。
その後の経過
この症例では、薬剤を中止しただけで、症状は速やかに回復し、後遺症などもなく数日で解熱し全快しました。
抗生剤の服用には十分注意が必要であること、特に長期の内服は避けるべきであることを再認識した症例でした。