子供の風邪薬があまり効かないと思う件について

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風邪薬って、効果ありますか?

子供が鼻水を垂らしたり、咳をしていたりして、小児科にかかると、お薬が出されます。大抵、ムコ○○○とかいうお薬であることが多いですが、このお薬を飲ませて、すっごく効いた!と実感したことはありますか?

大抵の方は、全然効かなかった、という感想を持たれると思います。一体どのような作用を期待してお薬が処方されるのか、小児科医の視点から、ご説明いたします。

風邪のときの症状

風邪は正式には「急性上気道炎」といって、鼻や口からのどの奥の喉頭という場所までの「上気道」と言われる部分に、細菌かウイルスが感染した状態のことを指します。

上気道にこれらの微生物が感染すると、局所の免疫反応が活性化して、気道粘液が分泌され、外敵を体内に侵入させないように働きます。気道粘液の中には外敵と戦う白血球や免疫物質が含まれ、外敵と戦ったあとの死骸やカスが鼻水や痰です。

鼻水や痰が増えてくると、それらを体外に出そうとする反応が出てきます。それが咳です。そして、さらに内部まで侵入されると、今度は炎症を起こす物質(サイトカインといいます)が白血球から放出され、粘膜が腫れたり、熱が出たりします。

風邪のときに処方されるお薬

咳を楽にするお薬

薬物名;ムコダイン、ムコソルバン、ムコサール、インタールなど

外敵の侵入を防ぐために分泌される気道粘液ですが、小さい子では特に、鼻水・痰や鼻づまりの原因になり、眠りが浅くなってしまったり、哺乳不良の原因になります。上に挙げたお薬たちは、気道粘液の分泌は抑制しませんが、分泌物のネバネバをやわらげ、水分を取り入れやすくすることで、鼻や痰を外に出しやすくする効果があります。

咳止めのお薬

薬物名;メジコン、アスベリンなど

咳中枢に働きかけ、咳を止める作用があります。また、アスベリンには痰を出しやすくする作用もあります。大人では、これで効かない場合、「コデイン」という麻薬系の咳止めを処方することがありますが、呼吸を抑制してしまう副作用もあるため、子どもには一般的に処方しません。

喉が痛いときのお薬

薬物名;トランサミンなど

炎症を和らげる作用があり、発赤や痛みの強い咽頭炎などに処方される場合があります。炎症を鎮め、血を止める働きがあります。また、美白成分としても知られています。

熱のお薬

座薬でも飲み薬でも、辛い熱の症状や、喉の痛みなどを和らげる目的で処方されます。成分は座薬も内服薬も同じです。高熱時によくあるQ&A

鼻水止めのお薬

薬物名;ぺリアクチン、アタラックスP、クラリチン、アレジオン、ザイザル、アレロック、アレグラ、オロパタジンなど

いわゆる、抗アレルギー薬です。花粉症などのアレルギーのときに主に用いられますが、風邪のつらい鼻水の症状を少しでもやわらげてあげたい!という熱意のもと、処方されてしまう場合があります。

鼻水を固めて止めてしまうという作用なので、ムコダインなどの去痰薬と一緒に処方されていたら、抗アレルギー薬で鼻水を固め、去痰薬で柔らかくする、という、相反した作用のお薬になるため、治療の目的が分からなくなってしまいます。

さらに、発熱時にはけいれんを起こしやすくするという副作用まであります。

抗生剤

風邪の9割には抗生剤は無効です。これはだいぶ浸透してきているように思います。

溶連菌や中等症以上の中耳炎が合併している場合に限り、飲むと効果があります。風邪と抗生剤について再考する

なぜお薬が効かないのか

風邪のときに処方されるお薬は、こうした体の免疫反応からくるしんどい症状をなるべく和らげるためのお薬です。ただし、前述したように、体は外敵からの侵入を防ぐために頑張ってわざわざ出している症状なので、完全に取り去ることは難しいし、仮に取り去ってしまうことができたとしたら、外敵に対する防御が弱くなってしまうことを意味します。

咳止めを処方する場合に医者が考えていること でも書いています通り、鼻水も咳も、重要な生体の防御反応であり、薬で症状を取り去ることは不可能だし、取り去ってしまったら困るとすら医師は考えています。ただし、生体の防御反応でも、あまりにきついとかえって回復の邪魔になることがあることも分かっています。だからこそ、鼻水を止めたり、咳を止めたりするお薬に頼る前に、どうして鼻水や咳が出ているのかという原因を考え、なるべく免疫の力の邪魔をしない方法で、楽にしてやることが重要です。

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こうした理由からも分かる通り、鼻水や少しの咳で、救急外来を受診する意味はありません。夜中の混雑した外来で何時間も待って、わざわざ効かないお薬をもらって飲む必要はありません。

実際、お薬飲む必要ってある?

合併症がない風邪の場合や、喘息などの持病がない限りは、鼻水の吸引をしたりして、咳が出にくい環境を整えてあげるだけで、ほとんどの場合は風邪は自然によくなります。実際、筆者も自分の子供が風邪を引いても、ほとんどお薬は飲ませていません。お薬が嫌い、とか、めんどくさいとかではなくて、実際はあまり効かないことが分かっているからです。

小児科の診察で、半分以上は本当はお薬が要らないにも関わらず、投薬がされています。日本では特にその傾向が顕著で、保護者側にも医療者側にも、問題があります。何もしてあげることができないことに我慢ができない保護者と、投薬することで手っ取り早く満足してもらおうとする医療者の問題です。(小児科救急外来とお薬依存症)ただし、それではいつまで経っても保護者のホームケアの能力がつきません。

小児科診療の真の目的

ここまで読んでくださった方、「じゃぁ、小児科なんか行かなくていいじゃん!」と思ったかもしれません。

「風邪の治療」だけでいえば、小児科医のできることって、本当に少ないです。でも、本当の目的は別にあります。

ひとつは、風邪にまじってくる重症疾患、合併症を見逃さないこと。数ある軽症者の中から重症者を判別すること。これは当たり前ですね。

もうひとつ、小児科外来での診療の真の目的は、保護者に家で病児をケアする方法を習得してもらうことだと思っています。次に、同じような症状がでたときに、自宅でできることはなにか、どういう症状に注意すればいいのか、どうなったら受診するべきなのか。面倒でも、小児科医がしっかり、ホームケアの方法を伝えていく必要があります。

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