2018エンテロウイルスの流行

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エンテロウイルスD68の流行

小児アレルギー学会から、2018年エンテロウイルスD68型の流行に関する注意喚起がありました。エンテロウイルスとはどんなウイルスなのか?どんな症状を引き起こすのか?小児科医が解説します。

エンテロウイルス属とは

エンテロウイルスとは、夏場に多くみられる感染症の原因となるウイルスの種類です。夏風邪の原因となる有名なものには手足口病、ヘルパンギーナなどの症状を引き起こします。また、ポリオ麻痺を発症するポリオウイルスも含まれます。

エンテロウイルスの分類

・ポリオウイルス(1~3型)  現在は国内での発症はありません。

・コクサッキ―ウイルス(A群1~24型、ただし23番は欠番)

・コクサッキ―ウイルス(B群1~6型)

・エコーウイルス(1~33型、ただし10、22、23、28は欠番)

・エンテロウイルス(68~119型)

上記は、古い分類法であり、同定された順番に番号が付けられていきました。同定されたものがあとから同じものだと分かったりして、欠番がちらほらあります。

現在はウイルス遺伝子型により、エンテロウイルスA~Dに再分類されています。A~Dの内訳は、再分類されているためかなり複雑になりますので、ここでは割愛します。

エンテロウイルスの感染経路と症状

エンテロウイルス属は、人体の外でもある程度安定して生きられるため、感染力は強いです。一般的にはつばやよだれなどのしぶき、排泄物処理後の手洗いの不十分などから経口感染します。ウイルスが体内に入り、扁桃や咽頭、腸管などに付着し、そこから血液中に入り、全身を回ってしまいます。すると、エンテロウイルスの型によって、ヘルパンギーナや手足口病の症状がでたり、急性出血性結膜炎や無菌性髄膜炎を引き起こすこともあり、場合によって脳炎・脳症や、ポリオ様弛緩性麻痺、心筋炎など重篤な症状をきたすこともあります。

発症直前と、発熱期が一番ウイルス排泄量が多いですが、その後何週間も、よだれや排せつ物にウイルスが排出されます。そのため、保育園などでは乳児クラスなどで大流行する傾向があります。

(参考記事;ヘルパンギーナの流行)

エンテロウイルスD68とは?

上記のエンテロウイルスのうち、遺伝子型で分けて、D68型と言われるタイプのものです。喘息様の症状や、脊髄炎によるポリオ様麻痺を起こすことがあり、注意が必要です。

エンテロウイルスD68は、2015年にも日本で流行しましたが、このときには、8月から9月にかけて、非常に重症の喘息のお子さんが増えました。また、同時期に急性の弛緩性脊髄炎の症例が増加し、その患者からエンテロウイルスD68が多数検出されたことから、麻痺を起こす原因としても注目されています。

2018年は、2015年の流行に引き続き、エンテロウイルスD68が増加しているため、注意が必要です。

どのような症状に注意すべきか

RSウイルスのように、細気管支の炎症を引き起こし、喘息のような症状になることがあります。参照(RSウイルスの流行)。ただし、入院して検査してもRSウイルスは検出されません。もともと喘息がちな子どもさんは、重症発作になる場合があるので特に注意です。

また、麻痺を起こす場合は、熱などの風邪症状が数日続いたあと、急に体に力が入らなくなります。麻痺の程度は様々ですが、呼吸停止を起こす症例の報告はありません。

過去の報告では、エンテロウイルスD68が検出された患者さんの内訳は、5歳までの発症が8割となっており、子供に多い感染症です。

症例提示

9歳女児

4日前に発熱あったが翌日には解熱した。
受診当日より、排尿ができないとの訴えがあり外来受診。
エコーでは、膀胱の緊満があるものの、自力での排尿が困難。3日前から排便なし。
下肢の脱力があり、自立困難、左右の腱反射も消失。

血液検査・髄液検査で異常なし。
脊椎MRIでは、特異的な所見なし。

入院し、導尿をしながら、点滴による補液にて対応。
麻痺症状は10日ほどで回復した。外来による経過観察を継続し、約2カ月後には深部腱反射も改善した。

後日、咽頭のぬぐい液から、エンテロウイルスD68を検出した。

1歳男児

もともと気管支喘息で投薬管理されていた。最近発作もなくコントロール良好であった。

受診当日より発熱と呼吸苦あり、外来を受診。
著明な陥没呼吸と呼気延長、シーソー呼吸を認め、酸素飽和度の低下を認めた。
喘息の中発作と診断し、ステロイド全身投与、気管支拡張薬などの治療を開始した。
治療には反応したものの、喘息の病態も強く、一時的にICUで呼吸管理となった。
約一週間後に回復、その後経過良好となり退院された。

後日、咽頭のぬぐい液から、エンテロウイルスD68を検出した。

両方の症例から分かるように、診断は、上気道からのエンテロウイルスD68の検出によりなされます。ただし、一般の迅速検査はエンテロウイルスには対応しておらず、特殊な検査を行う必要があります。保健所のウイルス分離事業にお願いするか(有償の場合あり)、研究室レベルで行っているPCR法で、エンテロウイルスそのものの遺伝子を検出します。

治療と予防

治療薬や特効薬はありませんので、症状に対する対症療法のみとなります。経過は良好で、ほとんどの症例では、少し時間はかかりますが、いずれ元の状態まで回復します。喘息の症例では、喘息に対する治療を行います。呼吸状態が悪ければ、呼吸器管理を行うケースもあります。もともと喘息症状がある方では重症発作となりやすいですが、もともと喘息がなくても、単発でひどい喘息発作を引き起こします。

エンテロウイルスに対するワクチンはありません。予防は、経口感染を防ぐために、手洗い、うがいの励行が基本です。また、アルコール消毒にはやや耐性があるため、次亜塩素酸やヨード液、アルデヒド系の消毒薬が有効です。

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