RSウイルスの流行

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2018夏、RSウイルスの流行が続いています!

例年秋から冬にかけて流行するRSウイルスですが、年々流行時期が早くなり、今年は8月から流行期に入っています。RSウイルスの症状と一般的な経過について解説します。

RSウイルスによる病気の特徴

RSウイルスは、一般的にどこでもみられる風邪の原因となるウイルスの一種です。年長の小児から大人までの風邪(急性上気道炎)の10-30%程度を占めると言われています。

RSウイルスはある程度大きい子どもがかかった場合は、普通の風邪症状のみですが、乳幼児など小さい子にかかったり、心臓病や喘息などの基礎疾患のある子供にかかると重症化する恐れがあります。肺炎や細気管支炎の原因となることがおおく、乳幼児の肺炎の約半数、細気管支炎の50〜90%を占めると報告されています。

2歳までにほぼすべての子供が1回はRSウイルスの感染を起こすと言われていますが、初めての感染は年齢が低いほど重症化する可能性が高くなります。生涯免疫はなく、一生のうちに何度でもかかります。また新生児は母親からの抗体をもらっていますが、感染を防ぐものではなく、無呼吸発作などを起こす可能性もあり注意が必要なウイルスです。

検査方法は?

インフルエンザと同じく、鼻の奥に綿棒を入れて検査をします。検査自体は10-20分です。

ただし、今のところ保険適応は1歳未満と、入院を必要とするような重症例だけです。周囲の流行状況と、臨床症状からもある程度診断ができます。

RSウイルス感染が問題になる事例

症例1

生後6か月。兄弟が風邪気味であった。鼻水が大量に出だして、咳も出てきてむせるようになった。3日目くらいから咳込みが激しくなり、ゼイゼイいうようになってきた。哺乳時にも鼻が詰まり苦しくなり、哺乳が十分にできない。4日目から発熱。哺乳ができず、呼吸が苦しそうで来院。口の中や皮膚も乾燥しており、排尿もすくない。

鼻水による鼻閉で哺乳困難!

RSウイルス感染では通常よりも鼻水の量が多い場合が多く、乳児は鼻が詰まると哺乳できなくなり、脱水状態となります。

喘息のような状態になる!

RSウイルス感染症では、特に乳児の場合、痰の分泌が増え、さらに気管支の先の枝である細気管支に炎症とむくみを起こして、空気の通り道が細くなってしまうため、喘息に似た病態となり呼吸困難を起こします。

こうなると、入院して、点滴で水分を補充し、さらに気管支のむくみをとるような吸入を併用しながら、場合によっては酸素吸入なども追加してみてあげる必要があります。

また、RSウイルスには抗生剤は無効なので、自分の免疫力で治るのを待つしかありません。体力をなるべく早く回復させてあげるために、上記の支持療法を中心に行います。

ただし、肺炎や中耳炎を合併した症例では、細菌の二次感染(RSウイルスだけでなく細菌があとからくっついて悪さをしている場合)の可能性があるため、あとから抗生剤が追加となる場合もあります。子供の肺炎の原因乳幼児の中耳炎の診断と治療

症例2

4歳。もともと喘息で管理中。鼻水と咳が数日前から出ていたが、3日目から発熱し、咳が次第に強くなってきた。痰も多く、咳をしても痰が切れないため、咳とともに嘔吐が続く。次第にぐったりし、ゼイゼイしてきた。食事も水分もほとんど摂れなくなってきた。

レントゲンで肺炎を確認、そのまま入院。

ある程度大きくなっても、肺炎の合併症が!

RSウイルスが重症化するのは、一般的には2-3歳までですが、それ以降でも肺炎を起こすことがあります。そして、大抵細気管支炎を合併しますが、喘息がもともとあると、細気管支炎の症状もきつくなります。肺炎+細気管支炎のダブルパンチで呼吸状態が悪くなり、入院の経過になることもあります。

症例3

2歳。数日前から鼻水と咳あり、日中は咳をしながらも比較的元気にしているが、夜になると熱があがることが一週間続いている。夜には咳がきつくて寝られない。

熱が上がったり下がったりが続く!

RSウイルスは、前述のように中耳炎などを合併します。中耳炎は一般的にはRSウイルスによるもので自然軽快を待つしかありませんが、時折夜間の熱だけが長引く場合があります。熱が下がっているときに元気であれば、夜の熱はあまり心配いりませんが、一度耳の診察をしてもらった方がいいかもしれません。

症例4

生後1か月。家族が風邪気味であった。数日前から鼻水が出ていたが、少し咳も出てきた。寝ているところ、急に顔色が悪くなり、唇が紫になった。息をしていないようであり、慌てて救急車を呼んだが、刺激すると呼吸が再開したようである。

低月齢では無呼吸発作にも注意が必要!

低月齢でのRSウイルス感染は、呼吸中枢に影響を及ぼし、無呼吸発作を起こすことがあります。赤ちゃんはもともと呼吸中枢が未熟なので呼吸がやや不規則ですが、一見静かに寝ているようで、呼吸を止めてしまっている場合があります。刺激をすれば回復することがほとんどですが、程度がひどい場合は、そのまま呼吸を止めてしまわないように、回復するまでの短期間だけ人工呼吸管理が必要になることもあります。

RSウイルスは低月齢だけでなく、未就学までのお子さんでは、合併症を起こして重症化する可能性のあるウイルスです。まだ流行が続いていますので、お気を付けください。

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