子供の頭部CT検査の影響について

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子供の頭部CT検査の影響について

子供が頭を強く打った場合、病院を受診して必要であれば、CT検査で頭蓋骨の中の出血の有無を調べることがあります。頭部CT検査の子供への影響について調べました。

そもそも放射線被ばくとは

放射線は日常生活の中にたくさん紛れています。普段、生活をしているだけで、宇宙から微量の放射線が降り注いでいますし、食べ物や空気中にもごく微量に放射性物質が含まれています。

宇宙などから降り注ぐ放射線の影響を「外部被ばく」、食べものや空気を体に摂りこんでからうける放射線の影響を「内部被ばく」と呼んでいます。

通常の生活をしている場合、外部被ばくは年間に約1mSv(=1mGy)、内部被ばくは約1.5mSv起こるとされています。

1回の頭部CTでどれくらいの被ばくが起こるのか

CTは検査される人の体格によっても多少線量が異なります。体格のいい大人に比べて、子供は検査に必要な放射線量は少ないことが多いです。放射線の影響を考えるとき、実際に機械が放出する放射線の量と、それが個体に与える影響とは違います。子供の場合は、体がまだ未熟なので、大人と同じ線量が当たったとしても、体に対する影響は大きくなると考えられています。実際に個体に当たって影響が起こる線量を「実効線量」といいます。

1回の頭部CTでの、生まれたばかりの赤ちゃんで約6mSv、0歳児では約1.5mSV程度と考えられています。2-3歳児で3-4mSV程度との報告が多いです。

つまり、1年間に外部被ばくする放射線量と同じくらいの放射線の影響を受ける、と考えると線量のイメージが付くと思います。

ちなみに、胸のレントゲン写真は1回0.1mSv以下、東京とニューヨークとを飛行機で往復しても同程度(0.1mSv程度)の被ばくが起こります。

放射線被ばくの子供への影響

医療におけるこうした検査の放射線被ばくの影響は、実はまだよくわかっていません。放射線は、一度に大量に浴びると、細胞が死んでしまい、生体も死に至りますが、長い間蓄積された影響がどこにどのように出るのかは、個体差もあるためはっきりしたデータがないのが現状です。つまり、「放射線を何mSv浴びたると、どこそこの病気になる」とは言い切れないのです。

ただし、CTなどの検査を受ければ受けるほど、細胞のDNAが破壊され発がんのリスクが上がることは様々な研究により分かっています。目の水晶体なども、放射線の影響でくすんできることも分かっています。また、けがをしやすいような低年齢であればあるほど、同じ線量でも体に対する影響は大きいものになります。

これは大人も含めてですが、放射線1000mSvあたり、生涯のがんの発症率が5%アップすると言われています。

どのようなときに頭部CT検査をするのか

子供が頭のけがをする機会は多いと思いますが、子供の体は柔軟ですし、大人と違って止血能力にも優れていますので、頭蓋骨の中の出血の頻度はそれほど高くないです。CT検査は、検査自体は10秒程度で済む簡単な検査で、台の上でじっとできる年齢であればすぐ行うことができますが、まだまだこれから数十年生きていく体にある程度の放射線を当てるということの影響を考え、その有効性がリスクを上回っていると考えたときにだけ行うことが重要です。

では、どのようなときに頭部CT検査を行うべきなのか。日本でも、施設や医師によって基準がまちまちです。

アメリカで4万人あまりを対象とした研究で、頭を打って救急部を受診した子供のCT検査を行うかどうかの判断基準を調べたものがあります。論文によれば、以下の条件がクリアできれば、重篤な脳損傷であるリスクは0.02%であるというものです。

⓵意識がはっきりしない
⓶受傷後、5秒以上ぼうっとしていたり、意識を失っていた時間がある
⓷受傷時のことを覚えていない(=健忘)
⓸頭蓋骨骨折がある
⓹たんこぶがある(おでこ以外)
⓺非常に強い衝撃を受けた可能性がある
⓻保護者からみて明らかにいつもと違う様子である

特に⓵~⓸に当てはまった場合は、約5%の確率で重大な脳損傷があったという結果でした。

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