蚊アレルギーについて

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蚊アレルギーってどんな病気?

夏になると、必ず「この子、蚊アレルギーでしょうか?」と聞かれます。数年前までは認知度が低かったこの病気ですが、有名人が罹患したことにより、一気に知られるようになりました。今では様々なブログにも書かれているこの病気について、書いてみようと思います。

蚊アレルギーの原因

蚊アレルギーというからには、蚊に刺されたらアレルギー症状が起こります。つまり、通常よりもひどく腫れてしまいます。腫れるだけでなく、水疱をつくったり、表面が潰瘍になってえぐれてしまったり、全身性の発熱を来すようになります。ただし、これは食物アレルギーなどという「アレルギー」とはまた違う原因によるものです。

蚊アレルギーの正体は、「慢性活動性EBウイルス感染症」というものです。この病気を説明するためには、まずEBウイルスについて知らなくてはいけません。

EBウイルスについて

EBウイルスは、ほとんどすべての人間が罹患すると言われる、ありふれたウイルスです。感染者の唾液に含まれており、キスすることによってうつるため、「kissing disease」とも呼ばれています。

このEBウイルスですが、通常は風邪のような症状を引き起こし、発熱や咽頭炎の症状で、通常は数日で熱も下がり、完治します。ウイルス感染を起こした場合、体の免疫細胞(B細胞)が一部EBウイルスに持続感染することでそれを記憶し、次に体内に侵入したときにすぐに対応できるようにしておきます。ところが、どういうわけかT細胞という免疫細胞に入りこんでしまうことがあり、持続的な感染を起こすことがあります。EBウイルスにおかされているT細胞は、EBウイルスを自分自身と認識し、排除できません。逆に、EBウイルスに感染したT細胞が自己増殖して、正常なT細胞が排除されてしまいます。この状態が「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」と呼ばれます。

T細胞へのEBウイルスの感染があると蚊アレルギーになる!

そして、T細胞にEBウイルスが持続的に感染している状態で、蚊に刺されると、上述した通り、ひどく腫れたり、熱がでたりといった、免疫亢進のような強い症状がでます。あくまで蚊アレルギーという症状は、CAEBVの一症状であって、蚊アレルギーがある=CAEBVというわけではありません。

慢性活動性EBウイルス感染症の診断と症状

まずは、先ほど述べたような、蚊アレルギーの症状があれば、この病気を疑います。検査は血液検査で、EBウイルスの抗体価やEBウイルスのDNA数を測定します。EBウイルスの抗体価が異常上昇していたり、DNA数が異常高値であれば、この病気と診断します。

症状は、蚊アレルギーの他、持続感染の期間が長くなると、10年から20年の経過中に、血液のがんになったり、自分の免疫細胞が自分自身を攻撃し破壊してしまう血球貪食症候群という病態になって、最悪の場合、命にかかわることもあります。血球貪食症候群を来すころには病気がかなり進行しており、さまざまなところに弊害がでている場合もあります。こうなってしまっては治療が難しくなります。

CAEBVと診断されると、こうした病態に移行しないうちに、根本的な治療が必要となります。

慢性活動性EBウイルス感染症の治療

EBウイルスがT細胞に感染してしまった場合は、EBウイルス感染T細胞がどんどん腫瘍性に増殖してしまうため、治療はこの感染T細胞を排除するしかありません。つまり、血液のがんである白血病と同じような治療を行う必要があり、その治療とは「骨髄移植」です。

感染T細胞だけを血液から排除できればいいのですが、残念ながら今の医学ではそのようなことはできず、血液内にある白血球をすべて排除して、まっさらになったところに新たな白血球細胞を入れてやるしかないです。(問題となるのは白血球のみですが、一緒に赤血球や血小板など他の血球もつぶれてしまいます。)

骨髄移植の前処置として、強力な化学療法を行い既存の白血球をなるべく少なくしてから、新たな骨髄の造血細胞を移植します。それが定着すれば、残った感染T細胞も自然と排除されるので、この病気は完治します。

心配し過ぎないで

上の説明を見ると、とっても怖い病気ですが、そもそも頻度はとても少なく、比較的多いと言われる日本でも年間数十例あるかどうかといったところです。小さい子は蚊に刺されて結構腫れることが多いのですが、表面がえぐれてきたり、全身性の発熱がない場合は、大きな心配はいりません。そして、大抵は小さいころよく腫れても、数年経つとあまり腫れないようになってきます(蚊の種類によっては腫れるものもありますが)。そもそも、小さい子ですぐにCAEBVの診断にはなることはほとんどなく、症状が進行してくるのが診断のひとつの目安になり、また診断されたからといってすぐに何かできるわけでもありません。骨髄移植治療にはそれなりの年齢になっていることが条件となりますし、治療のタイミングは少し後になります。

心配のあまり、外来に「蚊アレルギーの検査してください!」と駆け込んでこられるお母さんもおられますが、まずは1,2年、様子みても全然遅くないです。

参考になれば幸いです。

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