子供のPTSD
PTSDってなに?
PTSDとは、「心的外傷後ストレス障害」といって、自分の安全が脅かされるような恐怖体験をした後に、心理的な問題を起こすことです。
大人ではよく知られているこの障害、子供にも意外によく見られます。
先日のような大きな地震災害のあとや、交通事故、その他の事件事故、そして、映像などで恐怖を感じたあとに起こります。
子供のPTSDの特徴
中学生・高校生ともなると、だいたい大人と同じような反応が見られますが、小学生以下、特に幼児は恐怖体験を大人のように理解することが困難で、不安な気持ちを伝えたりする術がありません。まだ体験に対して受容ができていないと、独特の症状がでることがあります。これらの症状は年齢が低いほど出やすく、また治りやすいことも知られています。
以下の症状が1か月以上あれば、PTSDと診断します。
・赤ちゃん返り(わがままを言ったり、付きまとったりする)
・おねしょやおもらし
・夜驚症(夜間寝ているときに急に飛び起きて騒いだりする)
・悪夢を見たりフラッシュバックが起こる
・無口になる、表情が乏しくなる
・恐怖体験に関連したことから逃げる
・逆に恐怖体験に関連した遊びをする
・何度も何度も繰り返し恐怖体験の話ばかりする
・治っているはずの体の痛みや具合の悪さを訴える
大人はどう対応したらいい?
今までできていたことができなくなったり、急にわがままになって言うことをきかなくなったりすると、大人もイライラしてつい叱ったりと厳しくしてしまいます。ところが、子供は自分のおかれている環境自体への不安が根底にあり、いわば赤ちゃん返りと一緒なので、なるべく安心させてあげられるように、寛大に対処することが必要になります。
・「大丈夫だよ」と声に出して繰り返し伝える
・親がいつでもそばにいて安全だということを伝える
・子供が体験についての話をするときは、何度でも聞いてあげる
・日常生活のリズムは崩さない
大人の心のケアも必要
子供と一緒に事故にあってしまった場合などは、大人の心にも少なからず心的外傷があります。子どものケアに気を取られるあまり、自分のことはおろそかにしがちですが、大人がまずしっかり落ち着いて状況を需要し、食事や睡眠を規則正しくとり、好きなことをして安心することが先決です。
PTSDの子どもたちの親に共通するのは、親たちも少なからずPTSDの状態にあるということです。大丈夫だよ、と繰り返し子どもに伝えている、そのお母さんの表情がこわばっていたら、子どもの状態はよくなりません。
以前、交通事故後のPTSDの患者さんを診たことがあります。主訴は事故にあった子どもたちの元気がない、というものでしたが、明らかにお母さんが憔悴しきっていて不安神経症を発症していました。子どもたちは毎日車のおもちゃをぶつけ合う「事故ごっこ」を繰り返しており、情緒不安定になった、また事故を起こした車と同じような車を見ると泣きだすとのことでした。
月1度程度ゆっくりお母さんとお話しすることで、徐々にお母さんの不安も薄れ、同時に子どもたちも安定していきました。終診するまでは約1年ほどかかりました。
時間が解決してくれます
しっかり起こったことを受容し、乗り越えていくためにはある程度の時間が必要な場合がありますが、焦る必要はありません。赤ちゃん返り同様、時間が解決してくれますが、対応次第で期間が短くできるかと思います。
子供の不安な気持ちを受け止め、我がままだったり扱いにくくなったりするのは、その子どもがやりたくてやっていることではないことを理解してあげてください。