貧血は発達障害と関与するか

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生命の維持に必要な「鉄」

は、生命に必須の元素です。

鉄は赤血球の大事な材料です。鉄分が足りなくなると、貧血になります。

そして、貧血になると、脳が十分に発達しにくくなり、幼児の身体的・知的発達に悪影響を及ぼすことが分かっています。また、貧血状態が脳細胞同士をつなぐ「シナプス」の働きや発達を妨げることも分かっています。

自閉症スペクトラムと診断される子どもが、有意に鉄欠乏状態であるという論文がいくつも出ています。

鉄欠乏性貧血とは

一般的には、血の中の鉄分やフェリチンと言われる予備の鉄の値が低く、ヘモグロビンと言われる赤血球が少ない状態です。年齢によって正常値は多少違いますが、ヘモグロビンの値の下限は、成人男子で13g/dl、成人女子で12g/dl、学童期で12g/dl、乳幼児で11g/dlで、これを下回れば治療の対象となります。貧血の原因はいくつかありますが、鉄欠乏の場合は、赤血球の大きさが小さくなります。これは、MCVなどという赤血球の容積で測っていて、これが80%を下回ると、鉄欠乏の可能性が高くなります。加えて、血清の鉄の値が低かったり、フェリチンの値が40ng/dl以下であれば、鉄欠乏状態と診断します。血清鉄の値は日内変動があると言われ、朝に高く、夜に低くなるため、血清鉄が正常値でも安心はできません

鉄欠乏が起こりやすい時期

貧血になりやすい時期は、おおきく見て2つの期間があります。体が急速に成長する時期、つまり、一次成長期である乳児期と、二次成長期である思春期です。

母親は妊娠期、悪阻があったり、赤ちゃんに栄養分を分け与えなくてはいけないため、鉄欠乏性貧血になりやすいです。そして、子供が生まれてからも、母乳を出し続けなくてはいけないため、母乳に含まれる鉄分も不足します。乳児は体が著しく成長するので、鉄分が多く必要ですが、特に母乳育児されている乳児も一緒に貧血状態に陥りやすいです。そして、この鉄欠乏の状態が長く続くと、脳の発達や働きが落ちてしまって、元の状態にまで回復しなくなることも分かってきました。

思春期においても、体が急激に大きく発達する時期なので、それまでと同じような食生活でも、鉄の欠乏による症状が現れる場合があります。また、貧血はなくても、鉄欠乏の状態があれば、学習能力が低下する報告もあります。

貧血の症状

貧血の症状は様々です。一般には、「ふらふらする」「立ちくらみがする」というのを貧血の症状だと思っている方は多いですが、この「脳貧血」は一時的に脳に血液が回らなくなったときに起こるものです。

貧血は長期的に起こってくると、ごく普通に生活できて、スポーツもできてしまいます。前にテニスの近畿大会に出ていた子にたまたま採血すると、重度の貧血があったこともありました。本人はいたって元気で、長距離も問題なく走っていました。

疲れやすくなったり、息切れがしたり、という、典型的な症状以外に、イライラして怒りっぽくなったり、赤ちゃんではちょっとしたことで大泣きしてしまうような「易刺激性」といった症状や、夜泣きがひどくなるなど情緒不安定になったりすることもあります。また、乳児などで「憤怒けいれん」になりやすい子は、貧血を改善すれば治るとの報告もたくさんあります。「異食症」といって、砂や氷など、変わったものを好む様になったりすることで気づかれる場合もあります。さらに、鉄は睡眠に関係するホルモンの材料でもあり、睡眠障害を引き起こす説もあります。

貧血を改善しても発達の遅れはなかなか取り戻せない

鉄が発達認知機能の遅れをもたらすという研究がある一方で、治療効果についてはどうでしょうか。Cochraneでは、3歳未満の鉄欠乏性貧血の子ども225名に、鉄剤あるいは、プラセボ薬を投与し、精神運動発達の変化があったかどうかをレビューした。このレビューでは、鉄欠乏の治療により、短期的には精神運動発達や認知機能が改善されたという結論はでなかった。

つまり、鉄欠乏で一旦発達に遅れが出てしまうと、取り戻すのは難しいかもしれない、少なくとも取り戻すまでには日数がかかってしまう、ということです。

個人の体験談では、治療やサプリの摂取で、集中力の向上や、イライラの改善など、すぐに効果が実感できる場合も多く見られます。(サイトから高額なサプリへ誘導するものには注意しましょう)

まずは食生活の改善を!

重度の貧血や鉄欠乏は、薬物の内服が必要ですが、薬物を服用するためには検査や通院が必要となりますし、効果があるぶん便秘になったりと副作用もその分強いです。まずは鉄分がたっぷり摂れるような食生活の改善が必要です。

日本で市販されている粉ミルクには、鉄分がたくさん添加されています。その量は一般的な母乳と比較すると50-80倍とも言われます。母乳育児のお子さんは、母親経由で鉄分を摂取するしかないので、お母さんが積極的に鉄分を摂取する必要があります。

鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があり、吸収されやすいのはヘム鉄で、非ヘム鉄の5倍程度吸収されやすいです。ヘム鉄は肉類に豊富に含まれます。一方で、植物性の鉄分は非ヘム鉄であり、吸収がややされにくいのが難点です。

鉄分といえばレバーを連想する方も多いと思いますが、レバーは血抜きから調理法も大変ですし、独特の風味があるので、子供が好んで食べない場合も多いです。意外に知られていないのが、卵黄にもヘム鉄がたくさん含まれています。また、煮干し干しエビあさりハマグリなどの貝類の佃煮など、また鰹節にも多く含まれています。これらの食品をバランスよく摂取することで必要な鉄分の摂取は容易だと思います。

また、鉄分はビタミンCと一緒に摂取するとその接種率がぐっと上がります。日本人は昔から、ほうれん草のおひたしを鰹節を添えて食べていましたが、これは理にかなった摂取法であると言えます。

昔はひじきに鉄分が多く含まれると言われていましたが、2017年に再調査が行われ鉄分の含有量がどっと1/10に減りました。100gあたり55mgから6.2mgという減少です。昔は鉄鍋で加工されていたのが、ステンレスの鍋で作られるようになってから、というのが当初の見解でしたが、産地や季節によっても変動があるようです。

ひじきと言えば、発がん性のあるヒ素も問題視されました。WHOによればひじき一皿食べると寿命が58分だか減るようですが、有用な栄養素も含まれており、一概に害があるとはいいにくいかと思います。過剰摂取は避けたいですね。

日本人の多くが鉄欠乏状態

鉄欠乏は、産後うつ、小児うつなど、様々な情緒の不安定な状態を引き起こすことが知られています。鉄欠乏はあくまで要因の一つである場合も多いため、治療により劇的に症状が改善することはないかもしれませんが、集中力や易刺激性の改善を認めたする論文は多数あります。また、一旦改善したとしても、不摂生な状態が続くとまた再発してしまうのも事実です。普段から最低限の鉄分を摂取できるように、子供だけでなく、自分のためにも、気を付けていきましょう。

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