突発性発疹症後の不機嫌について考える。

sponsor’s link



この写真の発疹をみて、一体なんの病気だと思いますか?

1歳前くらいの子どもで、突然高熱が出て数日続き、その後解熱したと思ったら、全身に発疹がでた・・・

医者に「突発性発疹症でしょう」と言われ、原因が分かってホッとしたのもつかの間、解熱してからの激しい不機嫌でへとへとになる、、という話は、ママたちの間では「不機嫌病」として結構有名です。

高熱を出しても、他にあまりこれといった症状がなく、意外にごはんを食べて、機嫌よく過ごしている場合、ママのほうから、「これ、突発ですかね?」と聞かれることもしばしばあります。

でもこの不機嫌、小児科医でも意外に知らない先生もいはります。というのも、ママたちにとってかなりのストレスになるこの症状について、小児科の教科書にはほとんど記載がないんです。

突発性発疹症=不機嫌病について

突発の診断ってどうやってするの?

突発性発疹症の診断は、熱が下がってから(あるいは下がる途中から)典型的な発疹が出てからやっと、確定的になります。発疹は、多くは1mmほどの細かい赤色の小丘疹で、体から、手足・顔に広がります。かゆみはありません。

永山斑という、特徴的な喉の発疹が見えると、「あ、きっと突発だな」と発疹期の前に予想がつくことがありますが、全例ではありません。

そして、解熱して発疹が出て、実は小児科医もホッとします。鼻水や咳のない発熱は、小児科医にとってはとても嫌な症状で、尿路感染症や川崎病といった違う病気の心配が増えるからです。そして、発疹をみて「突発ですね。よかったですね!(^^)」といって、外来終了。

ママたちは、その後、不機嫌な乳児と格闘することになります。

発疹期には、たいていの子がグズグズで、発熱期よりも手を焼くことが多く、「治ったはずなのになんでこんなに機嫌が悪いの!?」と、心配になるほどです。その後は大抵は発疹が収まると同時に不機嫌も数日で治まりますが、分かっているのといないのとで大違いなので、外来ではかなり不機嫌になるけど数日で治るから頑張って!といっています。

では、不機嫌の原因は?

この不機嫌の原因ですが、教科書にも記載がないくらいですし、実は現代医学においても、その理由ははっきりわかっていません。昔の小児科医(男)たちは、きっと突発の看病なんかあまりしなかったので、きっとそんなん気づかずにいたのではないか、と勝手に想像してしまいます。よく高熱の後の疲れが原因とよく書いてありますが、他の高熱を来す疾患では同じことにならないので、きっと違う原因があると思います。

突発と不機嫌についての学術的論文

日本において、突発後の不機嫌について、アンケート調査を行った論文がありますが、115名の突発の患者さんの調査で、実に95%が不機嫌になり、解熱後に増悪したのは42%だったということでした。(実際はもっと不機嫌になってそうな印象ですが)小児科臨床2011(10)2245-48.木村正彦著.

また、違う論文では、 不機嫌の内容は、抱っこしないとぐずる(82.7%)が最多、その他、熟睡できない(54.5%)食事を受け付けない(43.6%)泣き止まない(23.6%)等で、多くが興奮性の症状であった。ただし、神経後遺症を残した症例はみられなかった解熱後に不機嫌であったケースと不機嫌でなかったケースを比較したところ、年齢、性別、有熱期間、熱性痙攣頻度、発熱期の血算・生化学データに有意差がなく、不機嫌症状の要因は不明であった。 とのことです。外来小児科2011(14)331-5.五十嵐登著.

このくらいしか、突発の不機嫌に関して書かれた学術的な論文がないのです。

突発の原因ウイルスについて。

突発性発疹症の原因ウイルスはヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)というやつで、2歳までにほぼ全員が感染します。感染しても症状がでない子もいます(HHV6はAとBの亜型に分かれますが、突発の原因になるのはHHV6Bです)し、熱だけで発疹が出ない子も相当数いることも分かっています。よく、「うちの子、突発ならなかったけど、今からなるの?」と聞かれたりしますが、軽く終わったために気づかなかっただけでしょう。

ちなみに、HHV7型というやつもいて、症状はよく似ているので2回突発にかかることがあるのはそいつのせいです。

このヘルペス属のウイルスは、一度感染すると体のどこかに潜伏感染するので、大人は多かれ少なかれこのウイルスを排泄しています(同様に潜伏して帯状疱疹の原因になる水痘ウイルスもこのヘルペスウイルス属です)。なので、お母さんからもらった免疫力がなくなるころに、大人の唾液からうつると言われています。

実は脳細胞に感染しやすい性質がある

この突発ですが、特徴的な症状のひとつに、「大泉門膨隆」というものがあるくらいで、脳の中に侵入し、影響を及ぼします。脳細胞に感染しやすいことが分かっており、そのせいでけいれんも起こしやすいですし、ときには脳症を引き起こすこともあり、決して軽症で終わるのが当たり前ということではありません。中には二相性脳症といって、けいれん重積で運ばれて、一旦意識は回復するものの、5日目くらいにまたけいれんを再発して脳症の診断となる経過の子もいます。この突発関連脳症は、年間200人程度の乳幼児が罹患していて、その約50%に後遺症を残す、怖い病態です。

また、けいれんを繰り返す子どもでは、治ったあとでも脳細胞にHHV6が潜伏し、けいれん時に脳細胞でのHHV6の再活性化が起こっていることが分かっています。

さらに、骨髄移植をして、免疫がまっさらになった人に、再感染を起こすことが知られており、その際には、脳炎が一番の問題になります。



突発の発疹期はまるで別人になったかのようだとよく言われます

ここからは私見ですが、同じように別人のように不機嫌になる病気に川崎病があります。40℃くらいの高熱が続くことやけいれんを起こしやすいなど、川崎病と症状が似ていて、もしかして川崎病じゃないの、、と心配になる突発の子どももいはります。

どちらの病気も、体の炎症を促すサイトカインという物質がたくさん分泌される状態にあることは確かなので、この病態特有のしんどさなのか。それとも、もしかしてもしかして、軽い脳症になっているのかもと思うこともあります。あくまで想像ですが。

ただ、ほとんどの子は数日で治るので、不機嫌に対してなにか治療が必要というわけではなさそうです。私が見た子の中には、解熱してから一週間も食欲もなく寝てばっかりだった子がいましたが、かなり稀なケースです。

現在、HHV6のワクチンの開発も進んでいます。いつか、突発も予防できる時代がくるのかもしれません。

ともあれ、いつかこの謎が明かされ、不機嫌の原因が取り除けるようになるといいですね。



sponsor’s link

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする